Imagine Cup 2005は激アツだった――日本人も入賞

Microsoftが主催する学生向けの技術コンテスト「Imagine Cup」。横浜で開催された今回の世界大会では、日本人が優勝する部門も出た。プログラミング後進国とはもう呼ばせない。

» 2005年08月03日 00時19分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 Microsoftのビル・ゲイツ氏がはじめて書いたプログラムは、13歳のときに書いた「三目並べ」のゲームだった。コンピュータの魅力に取り付かれた同氏のその後については語るまでもない。

 そんなビル・ゲイツ氏の実家の家訓には「事業で収益を得たら、地域や社会に貢献を」というものがあるという。財団を通じて社会貢献を続ける彼は、次の世代を育成することにも力を注いでいるが、その1つにImagine Cupを挙げることができる。

Imagine Cupとは

 Imagine Cupとは全世界の「学生」を対象に開催される技術コンテストで、今年で3回目を数える。2003年はスペイン・バルセロナで、2004年はブラジル・サンパウロで世界大会が開催された。その内容も第1回大会ではソフトウエアデザインといったプログラミングだけだったが、第2回大会ではアルゴリズム部門、ショートフィルム部門、レンダリング部門を新設、全4部門となっていた。

 そして、2005年の今大会では、より多くの学生がそれぞれの得意分野で参加できるよう、新たにIT部門、Web開発部門、ITビジネスプラン部門、Officeデザイナ部門、ビジュアルゲーミング部門の5部門を設置。また、ビジュアルゲーミング、IT、Web開発は高校生部門を設置し全12部門となった。こうした多彩な部門が設置された結果、今回の予選では、過去最高の世界150カ国以上から2万9000人以上が参加。その結果、日本チームも3部門4チームが今回の世界大会に進出している。

ソフトウェアデザイン部門 大阪大学大学院情報科学研究科
西尾研究室チーム
ビジュアルゲーミング
高校生部門
一関工業高等専門学校 熊谷一生さん
灘高等学校 加藤新英さん
Officeデザイナ部門 海城高等学校 竹井悠人さん

 ソフトウェアデザイン部門の日本代表、大阪大学大学院情報科学研究科西尾研究室チームは、昨年の世界大会にも日本代表として参加した中山浩太郎さんを含め4人で構成されるチーム。中山さんは昨年の世界大会、善戦はしたものの入賞には至らなかった。そのとき、問題はソフトウェアの出来ではなく、むしろプレゼンテーション能力にあると判断したようだ。プレゼンテーションも評価ポイントとなる同大会では、英語で行われるプレゼンテーションに中山さんが壁を感じたのも想像に難くない。

 そこで中山さんが取った作戦は、チームのメンバーに留学生を加えることだった。今回、ローズ・ロバートさんをチームに迎えることで、プレゼンテーション力の向上を図ったのだ。日本らしさを意識した着物で今回のプレゼンテーションに臨んだのもこの一環と見ることができる。

着物でプレゼンテーションを行うGEONOTEチーム

 同チームが今回発表したのは、「GeoNote」といういわばGIS(地理情報)システム。そこに今流行とも言えるソーシャル・ネットワーク・システム(SNS)のフレーバーをブレンドし、その上で自分の友達の位置情報のほか、お勧め店や観光スポットなどの地理情報を提供するもので、「口コミ」情報を有効に活用するためのシステムといえる。

 注目したいのは、GeoNoteとWebカメラを組み合わせることで、地理情報をカメラが撮影した映像の適切な位置にリアルタイムに表示する「バーチャルビューア」機能。一般的な地図を参照するのと比べ、自然な形で目的地などにたどり着くことができる。GPSとカメラ機能を持つ携帯電話などと組み合わせることができれば、すぐにでも実用化への道が開けそうなシステムであった。

プレゼンテーションの途中、屋外にてバーチャルビューアを実演

 Officeデザイナ部門は、WordやExcelなどOffice Systemアプリケーションをベースに、ソリューションを提案するものだが、竹井悠人さんはメタデータとRSSの組み合わせによる情報共有のありかたを提案していた。また、ビジュアルゲーミング高校生部門では、コーディングスキルとアルゴリズムのスキルを組み合わせ、ゲーム戦略を考案し実装するための技能を競っていた。

左上:ビジュアルゲーミング高校生部門の会場、
右上:博士の体内に進入したウイルスをナノマシンで駆逐するというストーリー
左下:これは肺のあたりだろうか
右下:一関工業高等専門学校の熊谷一生さん。加藤さんは不在だった。

 ちなみに、このビジュアルゲーミング部門では、前回のソフトウェアデザイン部門で入賞したフランスチームがプログラムを、同じくレンダリング部門で2位だったリトアニアチームがグラフィックを作成している。イベント後にもこうして活躍の場を提供することも評価されてしかるべきだろう。

激闘を終えて

 7月28日から行われていた激闘は、8月1日に結果が発表された。今回、ビジュアルゲーミング高校生部門では、加藤さんが優勝、熊谷さんも3位と入賞した。また、ソフトウェアデザイン部門はベスト8、Officeデザイナ部門はベスト6という結果となった。

 現状に満足せず、常に未知のことにひたむきに挑戦していく。若き日のビル・ゲイツ氏もそのようにしてパソコン革命に身を投じた。テクロノジーは世界を変えうるが、その担い手は常に人間である。次世代を担う彼らがテクロノジーを手に次なる革新に挑んでいくことを期待したい。

入賞者 Imagine Cup 2005各部門の優勝者たち。前段中央がソフトウェアデザイン部門で優勝したロシアチーム。その右で赤いシャツを着ているのがビジュアルゲーミング高校生部門で優勝した加藤さん

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