企業が抱える共通課題とデータ分析利用が本格化するBI

SAPラボのブカリー氏は、「データ分析はビジネスプロセスのコンセプトの中にある」と話す。意図はどこにあるか。

» 2005年08月17日 11時15分 公開
[梅田正隆,ITmedia]

 欧米はもとより日本においても、企業が抱える共通の課題には4つの要素がある。こう指摘するのは、SAP Labs アナリティクス・プロダクト・マーケティング バイスプレジデントであるローマン・ブカリー氏だ。4つの要素を挙げてみよう。

  • 1.業務が戦略と連動していない

 要素の1つが、業務が戦略と連動していないこと。組織の経営陣は目標を決定するとき、成長や利益率、あるいは新規市場参入などにフォーカスするだろう。

 しかし、そうした戦略を業務につなげる道具を社員たちは持っていない。仮に収益率の向上にフォーカスしたとしても、製造、営業、人事など、それぞれの担当者は何に焦点を当てればいいのか判断できずにいる。ブカリー氏は「社員は戦略を自身の業務に反映させるテクニックもツールもない状態です」と話す。

  • 2. 意思決定プロセスが効率的ではない

 2つめの要素が、効率的な意思決定プロセスを確立できていない点。だれもがいつも正しい決定を下そうと望んではいるものの、必ずしもそれができない。その原因は、不正確な情報や、時代遅れの情報に基づいて意思決定が行われているためであり、効率的ではない。

  • 3. タイムリーな洞察が欠如している

 タイムリーな洞察とは、リアルタイム型ビジネスインテリジェンスのこと指しているのではなく、ビジネスプロセスの結果をもとに適時改善していくための洞察のことを意味する。たとえば年1回の予算編成プロセスで、今後、顧客やサプライヤーに対してどのようなディスカウントを提供できるかといった、アクションに関する包括的、総合的な洞察をタイムリーに行う必要があるということだ。

  • 4.データ分析がビジネスプロセスと統合されていない

 ビジネスインテリジェンスにおいてデータ分析は重要なプロセスとなるが、データ分析がビジネスプロセスのコンセプトに統合されていないという点。

 同氏は4つの要素のうち、これが最も重要と述べ「業務アプリケーションとデータ分析ツールを見た場合に、これらの2つの要素がどのように相互に関係づけられているかがポイントです。しかし、これらがうまく連携されていないのです」と指摘する。

 これらの課題要素がどのような結果をもたらすのか。たとえば企業はCRMの分析ツールを使って、その顧客が企業にとってどのような価値を持つのかについて情報を得ることができる。CRMによるデータ分析によると、その顧客は数多くの商品を購入しており、コールセンターへもよく問い合わせをし、センターの回答をすぐに理解してくれている。だから、この顧客は企業にとって良い顧客であるとの結論を出す。

 ところが、それに売上データ、利益率データ、購買遷移率データなどを統合して分析してみると、その顧客に対する見方は一変してしまう。購入頻度は高いものの返品数も多く、利益の少ない商品ばかり購入していることが判明し、企業にとってはあまり価値のない顧客と判定された。

 1つの環境から顧客を捉えるのではなく、360度の視点で顧客の姿を捉えると異なる結果が出てくるものだ。

 ブカリー氏は「データ分析はビジネスプロセスのコンセプトの中にある」と表現する。ビジネスプロセスのコンセプトを実現するために、関係づけられる適切なデータを統合して分析を行うべし、という意味だろう。ビジネスプロセスにおける幾つもの意思決定に情報が必要であり、情報には包括的なデータ分析が必要だ。

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