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» 2005年09月07日 17時45分 公開

Linuxが「左翼的」なKeralaで成功している理由

南インド沿岸の小さな州、Keralaは、フリーソフトウェアとGNU/Linuxが非常に普及している地域だ。フリーソフトウェアとオープンソフトウェアの普及について、Keralaから何を学ぶべきだろうか。

[Sreelakshmi-Haridas,japan.linux.com]

 南インド沿岸の小さな州、Keralaは、フリーソフトウェアとGNU/Linuxが非常に普及している地域だ。フリーソフトウェアとオープンソフトウェアの普及について、Keralaから何を学ぶべきだろうか。

 Keralaは、社会主義的な考え方が強く根付いている州である。教養のある中産階級の人々のほとんどは、ほぼ左翼的と言っていいだろう。この州は、ほぼ100%の識字率を誇り、生活水準も国内の他の地域よりもおおむね高い。彼らが何かの決定事項に異議を唱えるときには、常にこうしたことの影響が現れている。彼らは選択の自由がないことを嫌い、当然、独占には反対する。オープンソースやフリーソフトウェアの繁栄にとって、これほどの好条件はないだろう。

 この州がどれほどFLOSSに打ち込んできたかは、政府自身が熱心に推進しようとし、援助していることで分かる。これを、高学歴層に対する票集めだと批判的にとらえることもできるが、たとえそうだとしても、政府がこの問題に関して進んできた方向は正しい。先ごろ、Linux Technology Extension(LiTE)という野心的な活動を、Centre for Development of Imaging Technology(C-DIT)が立ち上げたのも、その一例だ。この活動を通じてC-DITは、Kerala州の全14地区に広がる多くのコンピュータ教育機関をLiTEの中心的存在に変えようとしている。こうした場所から、現在使っているオペレーティングシステムに取って代わる存在があるのだという認識を、コンピュータユーザーの間に広めてゆくのだ。Linuxに乗り換えるユーザーの支援もする予定だ。他の活動としては、PCや周辺機器(プリンタ、CD/DVDドライブ、ウェブカメラ、スキャナ、モデムなど)をLinuxで動作させるための支援や、OpenOffice.orgなどLinuxアプリケーションの使用法のトレーニング、Kairali LinuxなどC-DITが開発したソフトウェアやツールの配布も行う予定だ。Kairali Linuxは、マラヤーラム語(Kerala州の公用語)版のデスクトップ用Linuxディストリビューションで、英語が分からなくてもLinuxが使えるようにできている。

 今年、州の学校で行われるITテストが延期を余儀なくされた。オープンソースソフトウェアについて生徒に充分に教えておらず、彼らがマイクロソフト製品にしか接していない、という理由で一部の教師たちが反対したためだ。この議論は長引いたが、最終的には、州が主導となって高校でのIT教育をすべて GNU/Linuxベースに移行する方向で決着した。こうしてKeralaは、学校教育においてフリーソフトウェアの使用を積極的に推進する最初の州となった。これにより政府は、いままでOS、アプリケーション、教育用ソフトウェアに支払っていた膨大なライセンス料を払わなくてすむようになる。FLOSSの支持者たちは、こうして節約した分の予算を使って、他の公共機関にフリーソフトウェアの採用を奨励したり、FLOSSの活動資金として提供して欲しいと考えている。

 こうした進展の幾つかは、Keralaに拠点を置くFree Software Foundation-Indiaが提案し、立ち上げ、推進してきた。FSFのインド支部は学生たちに人気がある。Keralaの大学のほとんどは、ずいぶん前から「Linux化」している。ほとんど誰もが、詳しくはないまでも、Linuxになじんでいる。実際のところ、Keralaの工科大学の学生の多くが、Linuxコミュニティへの貢献をしてきた。カーネルのパッチ、熱心な宣伝活動、有名雑誌への寄稿、ドキュメントの執筆、もちろんフリーソフトウェアの開発も行ってきた。それを考えれば、オープンソースの教祖、リチャード・ストールマン氏が全アジアの中で初めて提携をする州に選んだのも、納得できる。

 順調な発展を遂げているFLOSSだが、政治的に利用としているだけの支持者に警戒する必要もある。確かに、政治的な支持が新技術を一般に普及させるのに大いに役に立つこともあるが、こうした支持者は移り気で、足かせになることもある。派手に見える活動ほど衰退しやすいものだ。つまるところ、LinuxとFLOSS活動がKeralaに根付いているのは、個人的に使っているユーザーがいるだけでなく、普及活動を継続的に行っているユーザーがいるからだ。

 こうしたことから学ぶべきことは明白だ。Linuxの普及を推進するためには、人々に分かりやすい形で広めていくことが大事だということだ。具体的なメリットを強調すること、行動を起こしやすくすること、専門家の指導によってLinuxへの乗り換え方法を準備すること、わずかな費用でトレーニングを受けさせること、などだ。またユーザーでななく「伝道師」を育てることも、忘れてはならない。州に広がったら、国に広め、そして世界に広めるのだ。

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