次世代ITオフィスにおけるコミュニケーション──現在の電話の問題点とそれに代わるもの次世代のITオフィス環境を考える(2/2 ページ)

» 2005年10月07日 08時00分 公開
[下村恭(ハンズシステム),ITmedia]
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IP電話によるコスト削減

 まずコストの面を見てみると、IP電話の普及によって、かなり改善が期待できる状況になってきている。少なくとも、本社と支社の間の通話など、場面によっては通話コストをゼロにできるようになった。Skypeなどのソフトフォンの利用で、国際電話でさえ通話コストをゼロにすることも可能になっている。

 電話番の問題も、多機能電話や構内PHSを使って解決している企業も多い。内線番号を社員一人ひとりに割り当てて、顧客など外部の人からの通話は、代表番号からでなく、直接担当者にかけてもらうことで、電話番の必要をなくすという方法だ。

 NTTドコモがPHS事業を縮小している中、構内PHSに代わる手段として注目されているのが、携帯電話を社内の通信手段にも使用するモバイルセントレックスだ。これはまさに次世代の企業内電話として一般的になるだろう。社内では内線電話としてIP電話による活用ができ、社外に出ると携帯電話になるというものだ。中には構内での通信手段も無線LANによるIP電話というものがあり、電話とIP技術が切っても切れない関係になろうとしている。

 現在利用可能なモバイルセントレックスのソリューションでは、構内PHSと同様に2つの電話番号を持つ。企業の固定電話の番号(これはIP電話の番号でもかまわない)と、携帯電話の番号だ。これでは、電話をかける側からすると面倒なことになる。企業の電話番号にダイヤルし、不在の場合に携帯にかけ直すことになるからだ。もちろんはじめから携帯にかけることも可能だが、IP電話で通話すれば通話コストをゼロにできるだけに、現状では通信コストの面で不利だ。固定電話番号にかかってきた電話を携帯に転送するという方法もあるが、もっとスマートな解決方法も実現されようとしている。

 新聞でも報道されたが、総務省では携帯電話と固定電話を1つの番号で利用できるようにするため、番号体系の見直しを行っている。最終的には今の携帯やIP電話のように090や050といった番号で始まる番号体系になるようだが、これが実現すれば、1つの番号にかけるだけで、最適な通信手段で通話が可能になる。

 不在時や電話を受けられない場合の対応として、ボイスメールを使う方法がある。内線電話にかかってきた電話をとらなかった場合、留守番電話が応答し、録音されたメッセージをメールで転送してくれるものだ。従来であれば、オフィス内の誰かに転送されて電話番の仕事を押し付けることになっていたが、これでほかの人を煩わすことがなくなる。

電話の欠点を補う方法

 社内の場合、相手が電話に出られる状況かどうかは、グループウェアやWindowsメッセンジャーなどのインスタントメッセージングソフト(IM)の在席情報(プレゼンス)を利用する方法がある。ブランチオフィスを含めた全社でネットワークが構築されているのであれば、離れたオフィスの担当者であっても、プレゼンスを確認することも可能だ。もちろん、社外の人であっても、相手が自分と同じアプリケーションを使用しているのであれば、在席状況が確認できる。

 メッセージングソフトの良い点は、在席状況の確認だけにとどまらない。文字による会話(チャット)の場合、自動的に記録をとっておくことが可能なため、議事録の作成なども効率的に行える。さらに、ファイル転送やアプリケーション共有機能を利用することで、電話の欠点を補完することもできる。

 逆戻りするようだが、電話をしながらメッセージングソフトも使用するという方法もある。キーボード入力をするよりも話した方が簡単という方でも、上記のようなメッセージングソフトのメリットを享受できる。

 オフィスのコミュニケーション手段の主役である電話は、慣れ親しんだ使いやすさから、これからも主役の座に君臨するだろう。加えて、電話の欠点を補うさまざまな通信手段が統合されていくことになる。はじめは通話の機能しかなかった携帯電話に、文字通信機能であるメール機能が付き、カメラによって映像が扱えるようになり、ネットワークアクセス機能も充実してきた。

 この携帯電話がモバイルセントレックスという方法で社内の内線電話に入り込んでくると、社内のコミュニケーションがもっと多様化し、便利になるに違いない。手元の携帯電話で内線電話を受けられ、メールが確認でき、イントラネットのグループウェアにアクセスでき、在席状況の確認や会議室の予約ができる。そういう次世代ITオフィスの時代になろうとしている。

 情報の再利用の重要性は、個人的に保持している情報だけにとどまらない。ほかの人と一切の関わりなしに仕事をするのであれば別だが、一般的には複数のメンバーによる協調作業が不可欠だ。こうしたグループ内での情報共有や情報の再利用は、これからも重要であり続ける。次回は、コラボレーションという視点から理想の次世代ITオフィスを見てみたい。

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