IBMとMercury、Cellベースのブレードサーバを共同開発

MercuryはIBMと共同開発したCellベースのブレードサーバを2006年第1四半期に出荷する計画。ブレードサーバとしては初のCell搭載製品となる。(IDG)

» 2005年10月07日 15時16分 公開
[IDG Japan]
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 米IBMと米Mercury Computer Systemsは、IBM「BladeCenter」ラックシステム専用に設計された、「Cell」マルチコアプロセッサベースのブレードサーバを出荷する計画だ。両社が10月6日に発表した。

 MercuryのCTO(最高技術責任者)のクレッグ・ランド氏によれば、2006年第1四半期より、同社顧客に向けて「Dual Cell-Based Blade」が販売開始される。デュアルプロセッサベースの同サーバはCellプロセッサを採用した初の製品であり、同プロセッサを工業および医療用途で採用したいと考えているMercury顧客の開発プラットフォームとして提供される、と同氏は説明している。

 Cellは、IBM、ソニー、東芝3社の共同開発によるプロセッサ。PowerPCコア1基と、SPE(Synergistic Processing Elements)と呼ばれるより小さなプロセッシングユニット8基の計9つのプロセッサコアで構成される。マスマーケット向けとしては、来年より販売開始されるソニーのプレイステーション 3が初のCell採用製品となるが、MercuryとIBMは次期ブレードサーバ製品でCellを採用する、とランド氏は語っている。

 Mercuryのプレスリリースによれば、スペックの詳細は、NDA(非開示契約)を交わした早期導入顧客に提供され、RambusのXDR(extreme data rate)メモリと2基のCellプロセッサが採用されるもよう。8月開催のHot Chipsで行われたプレゼンテーションでは、Cellがクロックスピード3.2GHzでデビューする可能性が示唆された。

 Cellで採用されているコアの組み合わせは特有であるため、それに適合するようソフトウェアを完全に修正しなければならない。このため、初期段階の顧客の多くは、Dual Cell-Based Bladeサーバ1台を購入して開発ワークステーションとして利用するだろう、とMercuryとIBMでは見ている。

 Mercuryは、IBMやDellが提供する標準的サーバ以上の性能を要するアプリケーション向けのマザーボードを製造している。多くの場合、これらボードはマルチプロセッサシステムに組み込まれ、規模がはるかに大きいシステムで使われるCellプロセッサと構成が似ている。つまりMercuryの現行製品に対応するアプリケーションは、マルチプルプロセッシングを考慮に入れて書かれたものだとランド氏は指摘している。

 このため、Mercuryと同社顧客はこの種のアプリケーション開発を既に経験しており、Cell対応アプリケーション開発にスムーズに着手できるだろうとしている。同社はまた、独立系ソフトベンダー数社とともに、サードパーティーのアプリケーションをCellサーバに対応させる作業を進めているが、Mercuryがターゲットしている医療、工業、軍事市場で使われる大半のアプリケーションについてはMercury自身が手掛けているという。

 IBMのエンジニアリング/テクロノジーサービス担当ジェネラルマネジャー、サティシュ・グプタ氏によると、Dual Cell-Based Bladeは、IBMがCellのマルチプルプロセッシングエンジン用に修正したLinuxバージョンを搭載する。同社は現在、幾つかの著名なLinuxディストリビューション企業と、Cell対応Linuxバージョンの販売契約を視野に入れた話し合いを進めているが、進捗状況や内容については明らかにしていない。

 またMercuryでは、Dual Cell-Based Bladeの顧客用に基本的なOSサポートを提供する、と同社のマーケティング/アライアンス担当副社長のジョエル・ラドフォード氏は話している。

 IBMのグプタ氏によれば、同製品はBladeCenter規格に対応したあらゆるブレードシャーシに格納できる。BladeCenterは、スリムな“ブレード”フォーマットを採用した、サーバ、ストレージ、ネットワーキングデバイスのラック規格。MercuryのCell-Based Bladeを購入した顧客は、同製品をBladeCenterシャーシに格納する必要がある。

 IBMとMercuryは、Cellベースのブレードサーバのさらなる新製品を開発中で、来年から登場する見通しだとランド氏は語っている。Dual Cell-Based Bladeの初期バージョンは来年第1四半期に発売開始され、第2四半期までには広範囲で提供されるようになるという。なお同システムの価格については明らかにされていない。

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