中小企業のIT活用の原点はどこにある?情報技術による新しいビジネスシステムの創造(後編)(2/3 ページ)

» 2005年10月11日 08時00分 公開
[小川正博,ITmedia]

顧客ニーズが原点

図3 情報技術による事業革新

 上図にみるように、顧客ニーズに業務プロセスを適合させるために、情報技術を採用するという視点が重要である。情報技術があるから活用するのではなく、個々の顧客が求める個別の仕様に対応した製品の提供や、納期の短縮、価格の引き下げなど、具体的な顧客ニーズへの対応が、ビジネスシステムにおける情報技術活用の出発でなければならない。顧客満足度を高めるための情報技術の活用という発想が基本である。顧客に価値を提供するために情報技術を活用して、新しい方法を創造するのである。

 こうして、業務プロセスが改革されて、顧客を把握できた要因が意識できると、それをさらに新しい事業概念に構成して、事業の再構築を行っていく。同時に、事業をさらに有効に行うために、組織の変革や経営資源を補充して、新しいビジネスシステムを創造していくのである。

 それが顧客に支持されて有効ならば、他社の事業と差異化され、競争企業に対する競争優位も獲得できる。それが、顧客をさらに掘り起こして、ビジネスシステムをより効果的なものにしていく。このようなプロセスの繰り返しが、事業を革新していくのである。

 情報技術による業務プロセスの革新を、生産性の向上や特定の顧客ニーズの満足度向上だけに終わらせず、それを新しいビジネスシステムに概念化して事業の仕組みとして昇華させる。その事業概念を外部に訴えながら、新しい需要を確保できるように、さらに情報技術を軸に事業を再編成していく。このように情報技術をインパクトにして、企業は事業を改革することができる。

 顧客ニーズに対応したビジネスシステムを構築するということは、新しい価値をつくる事業の仕組みを構築するということである。このとき、製造だけでなく、配送やアフターサービスなども含めたバリューチェーン全体で、顧客を獲得することが大切である。

 いままでわが国の製造業は、生産業務での効率化に励んできた。今後もそれは必要だが、新しい生産方法を導入しなくてはならない。さらに、生産業務の効率化を図るだけでは、生産活動のグローバル化が進展している今日、顧客ニーズには十分に対応できない。資材の調達や販売、アフターサービスまで含めたバリューチェーン全体で、顧客のニーズに応えていくことが求められている。

加工業でも独自のビジネスシステム構築が可能

 自社製品保有企業では、より多様なビジネスシステムの構築が可能であり、情報技術活用の分野も広がる。反対に、中小企業のなかでも加工業では、製造プロセスが業務の大半であるため、製造業務以外で情報技術活用の効果をあげるには一段の工夫が必要である。そうしたなかで、情報技術を有効に活用している例を挙げよう。

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