Studio 8日本語版でFlash Videoを速く、制作は容易へ

異なるフォーマットの素材を1つのコンテンツとして扱うべく、「Macromedia Studio 8」では新たなテクノロジーを搭載した。ほかにも、XMLの構造解析、CSSの階層表示など、利便性を高めるための機能強化が目白押しとなっている。

» 2005年10月14日 09時18分 公開
[木田佳克,ITmedia]

 Webをリッチな表現力にさせる王道として語られることが多い“ムービー”コンテンツ。しかし、容量増大だけでなく開発環境も複雑化することから、なかなか取り組めないというサイトが多い。表現力が増すと理解はしていても、そこには映像編集に関わるノウハウが必須だ。それにも加え、Webのリッチさには、Webアプリケーションといった機能さの軸でも拡充しているという背景がある。

 マクロメディアから発表された「Macromedia Studio 8日本語版」(以下、Studio 8)は、ムービー利用でWebのリッチさをさらに高次元へと引き上げる狙いを持つ。既報のように2005年8月8日に英語版が発表されて以来、日本語版の登場が待たれていたが、マクロメディアは10月12日、都内ホテルで発表会を行って同製品の出荷スケジュールを明らかにした(関連記事)

 Studio 8は、Webサイト制作のためのスイートパッケージ製品であり、「Dreamweaver 8」(デザイナー、HTMLプログラマー向けのWebページ作成ソフト)、「Flash Professional 8」(Flashコンテンツ作成のためのソフト)、「Fireworks 8」(Web用に最適化するグラフィックソフト)、「Contribute 3」(Dreamwerverよりも機能を限定しWebコンテンツ更新を主眼したWebページ編集ソフト)、「FlashPaper 2」などが含まれている。

 Studio 8でコンテンツの再生環境を根底を支えているのが、Webブラウザのプラグインによってシェア90%以上を誇るFlashプレーヤー「Flash Player 8」の存在だ。Studio 8では、Flashプレーヤーで再生できる表現力をさらに強化しており、Flash Videoはもちろん、音声、静止画などを継ぎ目無く、そしてオーバーラップ表示して見せることを可能とした。また、Web開発をウィザード搭載で効率アップを図るとともに、複雑になりがちなCSSの扱いでも専用パネルで整理し(Dreamweaver 8)、クラス構造などを階層として視覚的に見るよう改良されている。HTMLコードの一覧性を追求した形だ。

 すでに従来バージョン(Studio 7)でもかなりの機能性が実現されていたが、恩恵を受けられるのはどのようなユーザーなのだろうか? 主に、Webデザイナー、Webアプリケーション開発者、Web向けのビデオ制作者がターゲットとなる同パッケージだが、米MacromediaでCEO Technology Adviserを務める田中章雄副社長は、今回のバージョンアップについて「Webの表現力を高めたことがいちばんのポイント。その開発環境として、Flash Professional 8やDreamweaver 8、Fireworks 8などが高機能さを補完する役目を担う」と語る。

 Webの表現をよりリッチなものへ、そしてケータイなどのPDAでも利用できるようクロスプラットフォームの開発環境を提供する。それがStudio 8の持ち味だという。

Flash Video利用が加速するか?

 多くの機能拡張があるStudio 8だが、Flash Videoの開発環境搭載が最大のトピックかもしれない。

 Flash Videoでは専用のウィザードが用意されており、ムービー素材をドラッグ&ドロップ、そして幾つか用意されている再生用の表示コントローラやスキン(テーマ)テンプレートを選択するだけで、最適化されたムービーコンテンツが作り出せる。従来よりも動画の扱い方が容易になっているのだ。

 スクリプトを多用する開発者には、前述のようにCSSの扱い方が視覚的になったことが大きな注目点だろう。多くの場合、CSSのコーディングにはコードの各所を参照し、関係を把握しなければならない。Studio 8ではコード上で各所が色分けされ、対になる個所が把握しやすくなっている。

 今回のバージョンではツリー構造で表示されるよう変更され、実際のページ上でもいずれかのクラスなどが適用されていることが視覚的に確認することができる。

ストリームをスムーズに、Flash 8 Video Encoderの採用

 Flashを支えるテクノロジーとして、Studio 8では「Flash 8 Video Encoder」が採用されたことが大きい。このエンコーダーは、ビデオストリームをスムーズに配信すべく「Flash Professional 8」パッケージにバンドルされている。一方、廉価版として「Flash Basic 8」と呼ばれるパッケージも加わっており、Flashムービーとしてどのような作品を作るかは、ユーザーがパッケージ選択できるようになった。

 Flashは現在、アニメーション、ビデオ、テキスト、サウンド、グラフィックを扱い、PCだけでなくPDA(ケータイ)向けのユーザーインタフェース作成にも使われている。先ごろ発表されたFlash Platform構想からも、今後はデジタル放送などPC以外の環境でも重要なファクターとなる勢いだといえる。

 また、Flashによる表現力として、ドロップシャドウ、ぼかし、グロー、ベベル、カラー調整などのフィルタ効果、乗算や反転などのブレンド効果をリアルタイムにビデオ上へ適用できるようになったことが大きい。すべてを動画で一発撮りせず、アフレコのようにオーバーラップ編集(マージ)することでデータ容量も抑えることができる。

 また、前述のFlash 8 Video Encoderで生成されたムービーを効率よく配信すべく、Flash Player 8では「On2 VP6」(米On2)と呼ばれるビデオコーデックが採用された。このコーデックでは、比較的限られたバンド幅でもDVD相当の画質を伝送できるよう配慮されている。

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