現在多くの映画制作の現場において、制作コストを高くしてしまう撮影方法が存在する。この夏公開された妖怪大戦争では、GEO-Elementを活用することでコストの削減を図っている。
現在多くの映画制作の現場において、CGが欠かせないものとなっている。最近では「FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN」などはフォトリアルなフルCGな映像作品として話題に上ったが、一般的な映画においても、CG映像が活用されたり、実写のカットにCG映像を組み合わせることで、実際には撮影不可能なシーンを制作することに成功している。
この夏に全国ロードショーされた角川映画「妖怪大戦争」もCGを活用した映画として記憶に新しいところだ。この映画のクライマックスでは、新宿副都心の都庁舎にあるものが突き刺さるというシーンが放映されたが、こうした撮影は非常に手間がかかる。
このシーンで求められたような上空から実際の都市空間を含めた映像は、これまではヘリコプターなどでカメラマンが撮影したものを使うことが普通だったが、この方法では、事前に最適なアングルを決めることが難しいという問題があった。また、そのコストについても、ロケハン(撮影のための下見)を含めて何度もヘリコプターを使って撮影して最適なアングルのシーンを得る方法を取らざるを得ないため、ヘリコプターをチャーターするための費用が膨らむほか、その都度関係する自治体等に飛行申請の手続きを行う必要があるなど事務手続きも煩雑なものだった。
今回、妖怪大戦争のデジタル・コンテンツ制作を手がけたOLMデジタルは、こうした問題を解決または軽減するソリューションとして日本SGIが提供する3次元地図アプリケーション開発キット「GEO-Element」を利用することで、実際の空撮を行う前にPC上で3次元の立体地図によりカメラワークを緻密に検討し、そのアングルをヘリコプターの操縦士に指示することで最適なシーンを低コストで撮影することに成功している。
また同作品では、都市空間のCG映像を作成するための基盤となる地図データとしてもGEO-Elementが活用されている。OLMデジタルは実写映像との品質のバランスを取るため、地図データのテクスチャを張り替えるなど独自の加工を施し、映像化した。
これまでGEO-Elementは、都市開発を進めるディベロッパーや建設会社、大学研究室、民間研究所などを中心に導入・活用されてきた。今回のOLMデジタルの事例はCGコンテンツ・プロダクションに導入された初のケースとなるが、制作コストや時間を大幅に削減可能な同ソリューションは今後、映画やテレビなどの制作現場でも3次元地図の活用が期待される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.