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» 2005年10月31日 14時02分 公開

経営情報の「歌姫」に教わったこと

「ディーバ」とはラテン語で「歌姫」のことだ。同名の映画タイトルを思い出す人もいるかもしれない。知らない人がほとんどだと思うが、ニッチな連結経営システムするディーバという国産パッケージ・ベンダーがある。

[梅田正隆,ITmedia]

 宣伝をするつもりは毛頭ない。広く知らしめたところで、この会社に大きなメリットがあるわけでもない。なぜなら、同社のパッケージはグループ会社の連結会計を支援するニッチな製品だからだ。製品名をDivaSystemという。一般には連結会計システムと認知されている。知名度はないものの、売上高1兆円超の大企業の30%以上に採用されているというから、国産パッケージとしてはよく売れている方だろう。以下、この製品を歌姫と呼ぼう。

 歌姫を発案したのが同社社長の森川徹治氏。旧プライスウォーターハウスコンサルタント時代から準備を進め、およそ1年半の歳月をかけて1997年に独立した。さて、この連結会計システムの開発ストーリーを取り上げよう。

情報単位という視点

 歌姫のことを理解するには、そのコンセプトを理解しておく必要がある。まず、同氏は、コンピュータや経営そのものよりも、人にフォーカスした情報処理の認知科学的な視点で、コンピュータと経営の関係を考えた。連結会計システムを設計していたとき、連結会計と一般の会計との違いに気がついたそうだ。

 その違いとは、一般の会計が仕訳などの詳細データを基盤とするのに対し、連結会計は財務諸表を基盤とする点だった。財務諸表は認知科学における情報単位の「メタ情報」に相当し、組織の意思決定方法においてメタ情報を介した統治モデルを「分散認知モデル」と呼ぶ。

 重要なのはここからで、同氏は、メタ情報をベースとする連結会計が、本来仕訳の必要のない「事業計画」における情報単位に極めて近いことに着目した。連結会計で導出される「実績」と、それに基づいて行われる「計画」を連携統合させることで、グループ経営における経営管理に応用できるのではないかと考えたのだ。

歌姫が教えてくれるもの

 同氏は「コンサルティング時代は、情報の流れを整理し、システムを組んでプロセスを自動化した。そこまでは手を入れたが、集めたデータをどうするかは、モヤモヤとしたまま残されていた」と振り返る。財務諸表を出力できるようにすれば仕事は終わりだった。しかし、連結会計においてグループ企業間で経営情報を広げられる道具建てさえあれば、大衆化できるのではないか。歌姫は、そうした発想から生まれた。

 歌姫の基本コンセプトは「連結会計情報データマート」。まさに経営情報を活用するためのBI基盤ともいえる。目的を絞り込み、目的に応じたメタ情報だけを集め、それを活用できるよう設計された。会社単位の連結ではなくとも、部署単位で財務諸表をつくれば単一の組織でも活用できる。その理由は、計画の情報単位を捉えた仕組みになっているからだと話した。どういう意味だろう。

 同氏は、「計画の精緻化」は経営の重要ポイントだと指摘する。計画の精度を高めるには、正しい事業環境の理解が求められるし、継続性を重視する企業にとって、精度の高い計画を策定する能力の確保が基本となる。こうした観点から、歌姫は、実績の財務諸表よりも細かい単位をとる、計画の財務諸表を情報単位として捉えるようにしたという。

 しかし、企業には計画の財務諸表など存在しないのではないか。この問いには、財務諸表がなくとも、手で按分すれば良いことと答えた。なるほど、計画は人の手で入力するものであり、その意味ではどの企業にも計画の財務諸表は存在することになる。計画単位で財務諸表を保持し、計画単位で予算と実績の比較ができる仕組み。これが歌姫となった。

 目的の本質に迫り、目的に応じたデータとは何かを見極め、データの活用することの本当の意味を突き詰めて吟味してみる。言うは易し、行うは難しだが、歌姫の考え方はデータ活用への取り組みの参考になる。

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