業務再開時に押さえておきたい3つのポイント

業務再開フェーズでは、BCP発動フェーズで定めた基本方針に従う形で業務を再開する。業務の再開・継続と復旧活動といった性格が異なる作業を同時に行っていく必要があるが、押さえておきたいポイントは大きく3つだ。

» 2005年10月31日 23時55分 公開
[水野宏美,ITmedia]

 業務再開フェーズでは、BCP発動フェーズで定めた基本方針に従う形で業務を再開していく。ここからは対策本部や対策チームの決定を関係者すべてが遂行していくことになる。このフェーズでは、業務の再開・継続と復旧活動といった性格が異なる作業を同時に行っていく必要があるが、押さえておきたいポイントは大きく3つに絞られる。

代替施設の確保

 緊急事態の発生によってプライマリーで利用しているオフィスが使用できない場合、速やかにセカンダリーとして用意しておいた代替施設にて業務を継続させる。この代替施設は、本社とは地理的に離れた拠点などをあらかじめ定めておく。ただし、多くの場合、代替施設はプライマリーと比べると、設備、スペース的に見劣りすることになる。こうした場所で事業を継続使用とする場合、後述する人的・物的資源の配置は、優先度の高い業務に関連したものから配置していくことが求められる。

人的リソースの確保

 業務再開フェーズでは、性格が異なる2つの作業を並行して進める必要があるため、人的リソースの確保とその配置は重要となることはすでに述べた。しかし、現実的には災害時などに人的リソースを十分に確保できることはまれである。本人が被災していなくとも、交通機関が完全にマヒしているため通勤できなかったり、さまざまな制限から予想以上に人手を要す作業が発生することが多い。こうした状況下に対応するためBCPでは業務の優先度を決めるのだが、これに従って優先度の低い業務を縮退し、そのリソースをほかに回すなどの措置を行っていく。

 また、業務によっては熟練した要員が必要となるケースもある。当該要員が優先して配置されるような計画としていくことになろうが、交通インフラの中断がある場合でも要員が確保できるよう、平時より配慮しておく必要がある。

物的資源の確保

 業務継続のためのオフィスと人的リソースのめどがついたところで、業務再開時に必要な物的資源の集約も開始する。物資には、業務機器や備品類といったものだけでなく、業務処理に必要なデータ・帳票類、そして生活物資などが含まれる。これらのうち、「バイタル・レコード」(Vital Records)と呼ばれる企業の存続にかかわる文書や代替情報などが失われていた場合、事業に大きな支障が出る。そのため、平時にそうした文書を特定しておくとともに、そのバックアップなどの管理方法の検討、緊急時の利用方法の検討などが必要となる。

 併せて、これらの物的資源を搬送するための物流ルートを確保する。特に、代替施設を利用する場合、平時の物流ルートと異なることに注意する必要がある。また、完全に代替施設に移行するのではない場合、つまり部分的に本社で業務を継続するなど、プライマリーとセカンダリーの併用が発生するような場合は、データの発送準備や搬送で混乱が発生することも珍しくない。また、その運用も通常時とは異なるため、場合によっては処理の組み合わせに問題はないかなどをモニタリングする必要があるだろう。

 とはいえ、ここまで来れば、BCPで定めた範囲の業務は再開できる状況が整う。しかし、不慣れな代替施設で業務再開を再会する場合はミスが発生しやすい。また、通常行わない手作業による対応も多く存在し得ることから、計画通りに業務遂行ができないケースがある。これに備えるには、平時の訓練のほか、手順書などを作成しておくことも有効だが、これらをしっかりと監視し、その遂行に問題がないかを注視するとよい。

復旧作業の実施

 業務の再開と併せて、被害を受けたシステムなどの復旧作業を開始していく。災害や事故により損傷を受けた施設やシステムなどの復旧作業の進捗状況、要員や物的資源の配備状況から、復旧目標を見直す。復旧が当初想定したものよりも遅れる場合は、代替運用の継続期間が長引くことから、顧客影響、要員配置、物的資源の調達、物流などの計画の見直しが必要となる。


 次回は、業務回復フェーズについて解説する。BCP発動フェーズで定めた基本方針に大きなミスがなければ、このフェーズで復旧させる業務範囲を拡大していくことになる。合わせて、利害関係者から情報提供を求められ、そちらへの手だても講じなければならなくなるのもこの時期だ。

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