Amazonを支える“アフィリエイト”の真意Webアプリ開発の新基準

数多くのECサイトで採用されているアフィリエイト。Amazonはその先駆けともいえる存在だ。Webサービスへのアクセス方法を広く公開する同社の方向性について、米国Amazon.comでテクニカル・エバンジェリストのジェフ・バー氏に聞いた。

» 2005年11月02日 16時30分 公開
[聞き手:木田佳克,ITmedia]

 ECサイトを世界6カ国に展開中のAmazon。国内でも2000年11月に開設し、幅広い層からの支持で成長し続けている。そのAmazonの魅力を高めているものの一つとして、アフィリエイトサービス「Amazonアソシエイト・プログラム」がある(関連リンク)。参加者が商品の売り上げから3〜5%程度を報酬として得ることができるため、自サイト上で製品の見せ方を工夫する動機付けにもなっている。利用者と利益を共有するものであり、最近では数多くのECサイトに採用されている。

利益を“共有”するビジネスへ

 Amazonアソシエイト・プログラムには、比較的高度な利用方法も用意されており、Amazonサイト内で扱うほぼすべての商品情報を外部から取得することができる(関連特集記事)。「Amazon E-Commerce Service」と呼ぶこのWebサービスへのアクセス手段は、最終的な決済手続きをすべてAmazonに集約できるため、派生サービスを数多く生んでいるのだ。

 ネットビジネスにおいて、相互にリンクされたWebの特色をうまく取り込んだ一つが、この“アフィリエイト”だといえる。それまでのサイト収益といえばバナー広告費が主たるものだっただけに、爆発的な広がりを見せている。その先駆けともいえるAmazonはどのような考えからアフィリエイト、そしてWebサービス公開へと至ったのか? 米国Amazon.com テクニカル・エバンジェリストのジェフ・バー氏に聞いた。

ITmedia 現在のAmazon Webサービス利用者数の推移は?

バー 現在、当社のプログラムには12万人の開発者が登録しています。2004年秋ごろの登録者数は約6万5000人でした。つまり、1年間で登録者数が倍増したのです。この増加の背景にはさまざまな要因があるとみています。その主なものを挙げてみましょう。

a)開発者の間でWebサービスのコンセプトへの理解が深まった。

b)SOAP、XML、XSLTなどの技術に関する開発者のスキルが高まった。

c)開発者や起業家が、Amazonの「マーケットプレース」(オークション)および「アソシエイツ」(アフィリエイト)プログラムを中心としたビジネス構築のための斬新な手法を多数考え出した。

d)「Web 2.0」のコンセプトが確実に根を下ろし始めた。開発者は「プラットフォームとしてのWeb」というコンセプトを真に理解し始め、Amazonのサービスを新しい創造的な方法で利用している。

 以上のような理由から利用者数が倍増したと分析しています。

Amazonドメインに留まらないWebサービス展開へ

ITmedia Webサービスの提供状況を教えてください。

バー 現在Amazonでは次に挙げる3つのサービスを提供しています。

  • ECS(E-Commerce Service):Amazonの6つの国際Webサイト(日本、米国、英国、ドイツ、フランス)で提供している数百万点の製品へのフルアクセスを開発者に提供するものです。

 ECSは、Amazonのプラットフォームのそのほかの機能(ショッピングカートやウィッシュリストなど)へのアクセスも提供して、Webサイトやパーソナライズされたショッピングツールを作成するのに適しています。また、Amazon マーケットプレースの販売業者が製品に対する需要を測定したり、製品の最適価格を設定するためにも利用することができるのです。

  • AWIS(Alexa Web Information Service):インターネットに関する数百Tバイトのメタデータへのアクセスを開発者に提供するものです。これらのデータには、リンク情報、サイトのパフォーマンス、カテゴリー情報などが含まれており、AWISにはWeb検索機能も含まれます。
  • SQS(Amazon Simple Queue Service):開発者がAmazon.comサーバ上でホストされるキューデータ構造を作成することを可能にするものです。キュー構造を利用することにより、世界のどこからでもアプリケーションが互いにデータ共有することができるのです。

 このようにAmazonドメインだけでなく、ほかのサービス展開でもWebサービス利用ができるよう整備しているのです。

ITmedia 最近では個人によるブログがAmazonの売り上げにとって追い風となっているのでしょうか? 最近の傾向についてどのように見ているか教えてください。

バー Webサービスとブログとは直接的な関係があまりないと考えています。しかしブログとシンジケーションは、Webサービスの一つの形態であるRSSやXMLに対する人たちの認知度を高めることに大きく貢献しました。また、ブログは重要な情報共有ツールでもあると考えています。開発者たちは、ブログを利用してWebサービス、そしてWebサービスを使う構築アプリケーションについて学んでいます。

ITmedia Amazonで開発に使われている言語傾向とその理由を教えてください。

バー われわれは、Perl、Java、C++、PHPなどさまざまな言語を利用しています。現時点では利用言語に関して明確な傾向は見られませんが、Javaの利用が増えているように感じています。

開発者のフィードバック効果はいかに

ITmedia アフィリエイトのAPI公開で新たに見えた可能性について教えてください。

バー 当社の開発者コミュニティーのメンバーが革新的かつ創造的なアプリケーションを開発することを、われわれは喜ばしく思っています。これは、Web開発分野の将来のトレンドを示す重要な指標であると考えています。

ITmedia Webアプリケーション開発に対してどのように取り組んでいるのでしょうか。

バー われわれは、掲示板や毎週開催されるライブチャットセッション、直接顔を合わせるミーティングなどの交流機会を通じて、開発者の声に耳を傾けるのに多くの時間を費やしています。これらで集まった情報は、当社の製品開発プロセスにおける指針として活用しています。長期的な計画には、開発者から学んだことが直接反映されているのです。



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