ロボット・アニメが隆盛の日本では、プロメテのように遊び心あふれるデザインのロボットが作られる土壌がある。現実がアニメを超える日は来るか。
見た目にもカッコいい「HRP-2」は、「戦闘メカ ザブングル」や「機動警察パトレイバー」のメカデザインなどで有名な出渕裕氏によるデザインを基に作られたロボットだ。「Promet」(プロメテ)という愛称も出渕氏が命名した。ロボット・アニメに出てくるロボットが現実に動いている! という印象が鮮烈に残る。
プロメテは、経済産業省が実施している「人間協調・共存型ロボットシステムの研究開発」、略称HRP(Humanoid Robotics Project)の一環で開発された。
プロメテの前に、HPR-2Pというプロトタイプが製作されており、それを経てプロジェクトの最終成果として公開されたのがプロメテだ。プロメテは川田工業のWebサイトで目にすることができるので、その違いを見てみるのもいいだろう。シンプルなデザインのHRP-2Pとプロメテの違いがよく分かる。
身長154センチ、体重58キロ(バッテリー含む)という比較的人間に近いサイズ・重さで、作業用として小回りが利く。また、電装部分を高密度実装することで、二足歩行のロボットでよく見かけるバックパック(背中にあるランドセルのようなもの)をなくすことに成功している。そのほか、内部パーツの工夫により、軽量化とともにスリムなボディラインを実現した。小型化・軽量化は日本人の得意とするところだ。
運動性能も高い。平らでない場所を歩けるように、足首部分の関節と足の裏が改良されており、多少のデコボコであれば、自分でバランスを取って歩くことができる。前に倒れた状態から、自分で立ち上がることもできる。さらに、脚の後ろに熱を逃がすための廃熱口をつけたことで、歩行時間を2倍にすることにも成功した。
プロメテが実際に作業する様子も公開されている。建築資材用の大きな板を人間と両側から持って運び、壁にはめ込むのだが、このとき人間が右に動けばプロメテも右に動き、左に動けば左に動く。声をかけなくても自分で判断して動くのだ。
壁の前まで来ると、人間が「ここでいいよ」と声をかけ片側を壁にはめ込む。「近づいて」と言うと、前進して板を立てかける。命令はすべて言葉でできる。プロメテが命令を理解すると、「近づきます」とか「立てかけます」と返事をしてから動作に入る。間違った理解をしていれば「止まれ」と言って命令をキャンセルできる。
作業が終わると、プロメテの方が「あとはよろしくお願いします」「お疲れさまでした」などとしゃべるところが可愛い。
ロボット・アニメが隆盛の日本では、このように遊び心あふれるデザインのロボットが作られる土壌がある。欧米の開発者からは、人型ロボットへの思い入れの深さが、少々奇異にさえ映ることがあるそうだ。欧米の開発者がプロメテを見たら、「なぜ、あのような姿なのか?」と質問するかもしれない。日本人開発者は、その問いに何と答えるだろうか? 「ね、カッコ良いでしょう」と満面の笑みを浮かべる姿が目に浮かぶ。そこに日本人が持つロボットへのイメージ、強くてカッコ良いヒーローという姿を見ることができるからだ。
今後は、平らでない場所を歩くことができる不整地歩行能力をさらに高め、転ばないようバランスを取る転倒制御や、転倒回復技術によっていろいろな姿勢から起き上がれるよう研究が進められるという。また、内部APIを公開する予定もあるという。
資料提供:産業技術総合研究所、川田工業
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