小規模企業がスーパーコンピューティングに注目

スーパーコンピュータは最先端の科学研究所だけのものではない。1000人規模のゴルフクラブメーカーPingでは、クラブ設計にCrayのXD1を活用している。(IDG)

» 2005年11月15日 14時23分 公開
[IDG Japan]
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 ゴルフクラブメーカーの米Pingは典型的なスーパーコンピューティングユーザーではない。航空機を作っているわけでもなければ、石油を探鉱しているわけでもなく、タンパク質を研究しているわけでもない。実際のところ、Pingはゴルフクラブの設計を手掛ける従業員1000名の会社だ。

 だが、この中規模企業は、今後のスーパーコンピューティングの重要な役割を示しているのかもしれない。

 PingはAMDのOpteronプロセッサを搭載するCrayのスーパーコンピュータを使って、ゴルフクラブの設計シミュレーションを行っている。同社スタッフエンジニアのエリック・モラレス氏によれば、スーパーコンピューティングのおかげで、同社は開発時間を大幅に短縮できている。Crayは今月に入り、Pingによる同社XD1システムの採用を発表した。XD1は12〜800個のプロセッシングコアをサポートする。

 「開発にかかる時間が数週間から数日に短縮されるため、製品を市場に迅速に投入できることになる」とモラレス氏。かつては製品変更のシミュレーションには丸1日かかっていたが、今では20分弱で処理できるという。

 モラレス氏は、この先、ほかにも多くの中規模企業がスーパーコンピューティングを利用するようになると考えている。また今年のSupercomputing 2005カンファレンスへの参加が何かしらの指標となるのであれば、高性能コンピューティングに対する関心は高まっている。このカンファレンスには13日現在で8600名程度の人が登録しており、Microsoftのビル・ゲイツ会長は15日に基調講演を予定している。カンファレンスの出席者は昨年よりも約10%増加している。

 セッションの大半がスーパーコンピューティングの技術的な問題に関するものとなるカンファレンスにゲイツ氏が注意を向けるということは、Microsoftがこの市場に注目していることの表れだ。

 ベンダー各社によれば、スーパーコンピューティングは、一部には、x86ベースのプロセッサを使ったシステムのおかげもあり、価格と性能が改善されており、企業ユーザーにとっても、より身近な存在となっている。カンファレンスで14日早くにリリースされたTop500スーパーコンピュータリストからも、コモディティチップの採用が大幅に増加していることが見て取れる。

 IBMのDeep Computing担当副社長デイブ・テュレック氏によれば、スーパーコンピューティングの需要は、デジタル動画やバイオインフォマティクスなど、高性能システムに依存する新規ビジネスの創造も含めた各種の力に喚起されている。「またスーパーコンピューティングは、リアルタイムの意思決定のための高速な分析を必要とする大量のデータによっても駆り立てられている」と同氏。

 同氏は大量のデータを生成する傾向のあるデバイスとして、特に、製品出荷の追跡に利用できるRFID対応デバイスを指摘している。

 エンタープライズベンダー各社は大量のデータを処理できるキャパシティオンデマンドのシステムを開発しているが、テュレック氏はこうしたシステムが市場で10%以上のシェアを占めることはないと考えている。

 Hewlett-Packard(HP)の製品マーケティングおよび高性能コンピューティング担当マネジャー、エド・ターケル氏によれば、32〜64ノード(ノードは通常、2プロセッサシステム)の高性能クラスタは徐々に産業市場での採用が増えつつある。Microsoftも独自のクラスタ製品を提供しており、この製品はHPが高性能クラスタをより多くの商用ユーザーに販売するのに役立つだろうと同氏は語っている。

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