シアクアラ大学の復興に寄与したSOI Asia

慶應義塾大学とWIDEプロジェクトのサブプロジェクト「SOI Asia」は、スマトラ沖大地震で大きな被害を受けたインドネシアのシアクアラ大学に対して、遠隔教育による復興支援活動を開始した。

» 2005年11月26日 02時17分 公開
[ITmedia]

 慶應義塾大学とWIDEプロジェクトのサブプロジェクトであるSOI Asiaは11月22日、2004年12月のスマトラ沖大地震によるインド洋大津波で大きな被害を受けた、インドネシアのスマトラ島アチェ州にある同国最大の国立大学であるシアクアラ大学に対し、遠隔教育による復興支援活動を開始したことを明らかにした。WIDEプロジェクトは、慶應義塾常任理事で環境情報学部教授の村井純氏らが創始したもので、オペレーティングシステム技術と通信技術を基盤とする新しいコンピュータ環境を確立することを目標としている。

 SOI Asiaプロジェクトは、インターネット基盤を使って、アジア諸国の高等教育に貢献することを目標とするプロジェクトで、リアルタイム遠隔講義やアーカイブ講義の共有などを行っている。SOIは「School on the Internet Asia」の略。

 衛星回線を利用することで、物理的に高速なケーブルの引きにくいアジア諸国の島々にも、短期間に比較的広帯域なインターネット基盤を構築するなどの実績を残している同プロジェクトだが、2005年11月には、アジア広域インターネット基盤と、その上で運営される遠隔教育基盤を、IPv6マルチキャストによる運用に移行した。2005年11月時点で、アジアの11カ国20大学がパートナー校として参加している。

 2004年12月に発生したスマトラ沖大地震では、パートナー国を含む多くのアジア地域が被災したが、その中でも、当時まだSOI Asiaのパートナー校でなかったインドネシアのシアクアラ大学では、約190名の教職員が命を落とし、教員不足が報告されるなど大きな被害を受けていた。復興支援対策を検討していたインドネシア大学連合から、SOI Asiaに対して大きな期待が寄せられていたこともあり、SOI Asiaでは2005年4月にシアクアラ大学をパートナー校とし、教育協力体制確立のための活動を行っていた。

 今回の発表は、シアクアラ大学における衛星回線を使ったインターネット基盤と、それを利用したSOI Asia環境の構築が完了し、同大学からSOI Asia授業への参加が開始されたことを示すもの。9Mbpsの広帯域衛星回線による受信と双方向衛星通信を組み合わせたインターネット接続環境が構築されている。

 環境の構築に当たっては、衛星回線の接続ポイントが用途に応じて切り替えられるよう設計を行い、通常のSOI Asiaで共有されているインドネシア国外からの英語による授業に加え、インドネシア国内のインドネシア語による授業が可能となった。この環境を使うことで、シアクアラ大学に設置したSOI Asia講義室は、インドネシア・ジャワ島にあるバンドン工科大学からの授業を常に共有可能となり、2006年1月から授業の共有が開始される予定。

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