「幾つくらいのサービスがあればSOAと呼べるのか?」との質問を受けた。これに関連して興味深い結論が導かれる。SOAによるシステム構築のメリットは、「小さく始めて大きく育てる」ことができる点にある。
SOAで企業の情報システムはどのように変化するのか。オンラインムック「SOAでつくる変幻自在の情報システム」で探る。
栗原 潔(テックバイザージェイピー代表取締役)
先日、あるセミナーでSOAについて講演したところ、「幾つくらいのサービスがあればSOAと呼べるのか?」との質問を受けて返答に窮してしまった。しかし、よくよく考えてみれば、別にサービスが一つしかない状況であっても、SOAと呼ぶことは差し支えない。
SOAにおける「アーキテクチャー」という言葉は、設計手法とでもいうべき意味であり、EA(エンタープライズアーキテクチャー)における全社的共通設計という意味のアーキテクチャーとは異なるからだ。先の質問を、「何台のサーバがあればクライアントサーバアーキテクチャーと呼べるのか?」と置き換えてみれば、わたしの言おうとすることが分かるだろう。
この質問に関連して、興味深い結論が導かれる。SOAを実現するためには、大規模な導入から始めるビッグバンアプローチは不要であるということだ。「小さく始めて大きく育てる(start small、think big)」ことができる点が、SOAのIT投資対象としての有効性を高めている。
企業内で利用されている多くのアプリケーションにおいて、全社的に共通して利用されている機能があるはずであり、それらの幾つかを選択してサービス化することで、大きなメリットを発揮することも多いだろう。そして、対象とするサービスを広げていき、最終的には、企業システムの大部分がサービス化(モジュール化)されているという理想的な状況を目指せばいい。
どのような機能がサービス化のスタート地点として有効になるかは、企業ごとに異なる。しかし、多くのケースで有効な、典型的なSOAの活用ケースが存在する。いわば、SOAのキラーアプリケーションとでも呼ぶべき形態である。
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