かつては情報システムが構想倒れに終わることも珍しくなかったが、現在は、ITやネットワークの進化によって状況が変わってきている。中堅企業はITをどのように選択していくべきなのか。
長谷川 典生(IMGジャパン)
5年前には、情報システム構築において、構想はできても実現可能性に問題があるために採用されなかったり、開発に着手はしたものの、途中で大きな方向転換を余儀なくされたりなど、結局、当初に描いた構想ほど早くにはシステムが稼働しなかった、といった例が多く存在していた。
中堅企業の情報システム部門の方々にも、こうした経験を持つ方がいるのではないだろうか。
一方で、現在ではCPU、ストレージなどのハードウェア性能の向上や、データベース管理システム(DBMS)、アプリケーションサーバなどのソフトウェアの進化、さらに、ネットワークのブロードバンド化も併せて、それらを有機的に結合することによるスピーディなシステムの構築が可能になっている。
中堅企業は、システム構築の際に、まず目標とするビジネススピードを実現するための最低限の要素を選択するべきである。現在ではよほど特殊なことをしない限り、システムのパフォーマンスは確保できるので、最初からハードウェアに過度な投資を行う必要はい。
次に、変化に対応できる基盤技術を採用すること。中堅企業がビジネスを成功させるためには、大企業には真似できないフットワークの軽さが必要であり、ビジネスプロセスの変化への柔軟な対応が求められるからだ。そこで重要になるのが、構築するシステムに見合った技術要素の選択である。
例えば以下のようなモデル企業が基幹業務システムを構築するとしよう。
まず、第一に分析するのは、ビジネスプロセスである。具体的には、どのような経路で「受注」から「出荷」がなされるのかということだ。このモデル企業の場合は、1日の出庫数に対する受注の90%がEDIによるものであるため、端末からの入力は4000件(4万×0.1)/日となる。
1日4時間稼動する受注センターの処理能力は1時間当たり1000件で、これにピーク時の作業負荷を1.2倍と予測すると、受注センターは1時間当たり1200件の入力ができればいいことになる。端末数は15台なので、1台当たりのパフォーマンスは80件/時間となり、特に高パフォーマンスを実現する必要がないので、開発費用の掛かる専用クライアントは必要ではないことが分かる。
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