バックアップ統合を可能にした日本経済新聞社のストレージ戦略Brocade Conference 2005 Tokyoレポート

新聞系、電子メディア系、業務系――システムごとに複数のSANが乱立してしまったという日本経済新聞社は、ブロケードの「SilkWorm Multiprotocol Router」を活用してストレージ基盤を統合しようとしている。

» 2005年12月14日 09時28分 公開
[ITmedia]

コスト削減の要は「SANの統合」にあり

 都内で開催されたブロケード コミュニケーションズ システムズのプライベートカンファレンス「Brocade Conference 2005 Tokyo」では、「SilkWorm Multiprotocol Router」(MPR)を利用してSAN統合を目指している日本経済新聞社の事例が紹介された。

 新聞から電子メディアまで幅広い情報発信を行う同社では、扱うデータやシステムの違いから、それぞれ個別にSANを構築してきた。しかし、2001年3月、セキュリティ対策やコスト削減の課題が持ち上がり、情報システム部は解決を迫られたという。

 システム開発部門を集約した「情報技術本部」とシステムコストの20%削減を目標とした「コストカットチーム」が新たに組織され、IBMとの10年間のITアウトソーシング契約など、さまざまなコスト削減対策を打ち出した。その中の1つがストレージ基盤の再整備だった。前述のとおり、同社はシステムごとに異なるSANを構築してきたため、バックアップや障害対策など運用に掛かる負荷の増大や、ストレージ容量の増大に伴うコスト増加が、見過ごせない問題となっていたのだ。

木下和之氏 日本経済新聞社 情報技術本部インフラ統括グループの木下和之氏

 同社の情報技術本部インフラ統括グループの木下和之氏は、「大幅なコスト削減には、個々のSANを管理するのではなく、インフラとして統合する必要があった」と話す。

LSANで複数SANを相互接続

 しかし、統合への道のりは想像以上に険しかった。「既存システムの変更を嫌がる開発部と、統合費用への不満をもらす上層部の両方から突き上げに遭った」からだ。特に、新聞系と電子メディア系とでは、セキュリティポリシーや障害時の切り分け方法、運用体制など違いが大きく、折り合いがつかないまま、統合を一時見送るような状態になっていた。

 ところが、2004年秋に転機が訪れたという。米Brocadeのマイケル・クレイコーCEOが来日した際に、物理的な構成を変更することなく複数SAN環境を相互接続できるMPRを同社に提案したのだ。

 「Logical SAN(LSAN)により、物理的に個別運用されているSANを相互接続できる。その点が魅力だった」と木下氏。LSANとは、MPRを介して複数のSANスイッチを通信可能にする機能のことだ。

 「新聞系のゾーニングを変更した場合、電子メディア系のゾーニングに影響が出ることが懸念されたが、LSANであればその問題も払拭された」(木下氏)。

構築のポイント SANの相互接続を選んだポイント

 このほか、木下氏は、マルチベンダー環境をサポートしている点や、管理が容易であったことも採用のポイントに挙げた。今後、日本経済新聞社では、MPRが搭載しているIPにファイバチャネルプロトコルを載せることができるFC-IPルーティング機能を活用し、東京・大阪間のストレージレベルでの災害対策システムを構築する計画だという。

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