ファイルサーバから営業秘密が漏えいしてないか?コンプライアンスに耐える情報システムとは?:(3/3 ページ)

» 2005年12月21日 10時17分 公開
[佐藤隆,ITmedia]
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情報システムを見直す

 インク・コムでは、デジタル情報に関する秘密情報の管理の一部が不十分なことが分かった。そこで、情報システム部門はシステムの改善を図った。改善前の営業部のファイルサーバの設定を見てみる。

改善前のITインフラ

 営業部のファイルサーバ(Sales01)のアクセス権限を見てみると、営業部に所属する社員は部門内のすべての情報にアクセスすることができた(表2)。ファイルサーバの情報を一括して共有できるので便利だったが、本来なら営業秘密となる印刷ノウハウに関する情報も同じ場所に置かれており、別途アクセス権限の追加が求められた。

改善前の情報システム(営業サーバ)のアクセス権の状況
担当顧客名 営業社員 利用可能なサーバ アクセス権限
スーパー激安 営業担当A主任 sales01 読み書きOK
酒屋 営業担当B主任 sales01 読み書きOK
時計屋 営業担当C sales01 読み書きOK
販売店X 営業担当D sales01 読み書きOK
中古車ショップY 営業担当E部長 sales01 読み書きOK

 アクセス権を見直していると、さらに競合する企業へ情報が漏えいする可能性があることも判明した。A主任が担当している「スーパー激安」では、酒も販売している。「酒屋」を担当するB主任の情報も閲覧できてしまうのだ。A主任が営業成績を上げることを優先すれば、B主任が顧客から預かった情報を不正に利用するリスクがある。このような不正は、顧客の信頼を裏切る行為となり、企業活動に悪影響を及ぼしかねない。これらを踏まえて、次のような改善を営業サーバに施した。

改善後のITインフラ

 競合する顧客の情報にアクセスできない仕組みを導入した(表3)。ファイルサーバを2台に増やし、競合する顧客の情報を不正に利用されないように物理的に分けた。同一サーバ上でアクセス制御を行わなかったのは、セキュリティホールへの攻撃、パスワード攻撃などにより、管理者権限が奪われるリスクを回避するためである。

 続いて、フォルダをユーザー別に作成し、本人以外がアクセスできないようにアクセス制御を行った。ただし、営業部長は営業部すべてのフォルダにアクセスでき、営業状況を確認できるようにしている。

改善後の情報システム(営業サーバー)のアクセス権の状況
営業社員 利用可能なサーバ 保管場所 アクセス権限
営業A主任:スーパー激安担当 営業用ファイルサーバ:sales01 フォルダA A主任、部長
営業B主任:酒屋担当 営業用ファイルサーバ:sales02 フォルダB B主任、部長
営業C:時計屋担当 営業用ファイルサーバ:sales02 フォルダC D主任、部長
営業D:家具販売店X担当 営業用ファイルサーバ:sales02 フォルダD D、部長
営業E部長:中古車ショップY担当 営業用ファイルサーバ:sales01 フォルダE 部長

 以上によって、不正競争防止法の適応を受けるためのインク・コムの見直しは一段落した。あとは、利用者が社内の規定に従って運用されていることを確認していけばいい。

佐藤隆


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