仮想印刷会社インク・コムは、営業秘密を守るために不正競争防止法への対応に着手した。すると、営業部門のファイルサーバのアクセス権に問題があることが分かった。
仮想印刷会社インク・コムでは、法令順守の対象として前回、優先順位が高かいと分類された不正競争防止法への対応から着手することにした。この法律は、営業秘密・ノウハウの保護を対象としたもので、同社にとっても情報管理の側面から重要性が高いと判断したからだ。
不正競争防止法は、営業秘密や技術上の秘密情報を保護する法律である。その背景には、雇用形態の流動化に伴って、業務のアウトソーシングなどが活発になってきたことがある。企業の営業秘密が流用される懸念があるため、企業の秘密情報を保護するために不正競争防止法が1993年に改正された。これによって、企業は差止請求、損害賠償、信用回復の措置を講じることができる。
しかし、ここで大切な点は「営業秘密は経営者が決めても、法律で認められるとは限らない」という点だ。情報が営業秘密となるためには、「秘密管理性」「有用性」「非公然性」の3つの要件を満たさなければならない。
営業秘密となる要件 | 認められない例 |
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秘密管理性 | 情報に秘密表示がない、施錠できる保管庫で管理されていない、人的・時間的な制約がない |
有用性 | 経営者のスキャンダル情報、社内ゴルフ大会の結果(業務とは無関係な情報) |
非公然性 | 既に報道された情報、ホームページに掲載された情報 |
秘密管理性とは、該当する情報が秘密に管理されていることをいう。例えば、紙であれば、秘密であることが分るようにスタンプが押され、金庫に入れてあったり、施錠されたキャビネットに保管されている必要がある。デジタルの情報についても同様に秘密に取り扱われている必要がある。
2つ目の要件となる有用性とは、製造、販売などの事業活動に「有効な技術上または営業上の情報」であるということだ。これは逆の例で説明すると分かりやすい。当然のことながら、経営者のスキャンダルや社内ゴルフ大会の結果のような情報は保護対象外となる。このような業務に関係ない情報は、秘密情報として認められないのである。
3つ目の非公然性とは、文字どおり公然と知られていないことを意味する。既にテレビや新聞で報道された内容は秘密情報として認められない。秘密情報として、このような情報に対して不正競争防止法の適用を受けることはできない。
では、インク・コムにとってはどのような情報が秘密情報となるのだろうか? 同社の場合では、原価に関する情報、印刷のノウハウなどが該当するだろう。
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