64ビット環境が普及した2005年、2006年は新たなプロセッサ戦争に2005年アクセストップ10

64ビットCPUがローエンドのサーバにも搭載されるようになり、64ビットコンピューティングは2005年に花開いた。2006年は、2つのCPUの動向に注目したい(ランキング7位)。

» 2005年12月26日 11時30分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 エンタープライズチャンネルで2005年最も注目された記事は何か? 年間ページビューランキングで7位を記録した「64ビットコンピューティング最前線」の関連記事について考えてみよう。


 x86プロセッサを64ビットへ拡張したAMDのOpteronプロセッサが2003年4月に出荷された後、1年ほどしてIntelも同様の方向性を打ち出し、サーバプラットフォームの全ラインアップが64ビット機能を備えることになった。64ビット戦争の幕開けである。

 ハードウェア側の対応が進む中、2005年に入ると、Microsoftから64ビット拡張をサポートしたWindows XPおよびWindows Server 2003 x64版が相次いでリリースされるとともに、各ハードウェアベンダーから新たに発売されたx86サーバの多くが64ビット対応を果たした。ITmediaでもオンライン・ムック「64ビットコンピューティング最前線」を展開したが、2005年は64ビットへの移行が進んだ年だったといえよう。

 Microsoftの64ビットに対する動きと比べると、Linuxのそれは幾分先行している。Red HatやNovell SUSEをはじめ、主立ったLinuxディストリビューションはすでに64ビット対応を果たしている。

 個人的には、つい最近、Athlon64 X2搭載マシンを自作し、とうとう64ビットの世界に足を踏み入れてみた。しかし、デバイスドライバ周りなどでつまずくことも多く、Linuxの64ビット対応というのもピンキリな部分があるのだなと実感している(Windowsは64ビット版を持っていないので試せず)。

 さて、2006年だが、64ビットへの移行は一段落したといえる。デュアルコア、マルチコアといった動きにも興味があるが、個人的には2つの動向に注目している。

 一つはItaniumの動向だ。Intelは、エンタープライズコンピューティングに存在する多様なセグメントに対応すべく、ItaniumとEM64Tの2本立ての戦略を進めている。しかし、Itaniumの方はそのスタンスに若干の揺らぎを感じることもある。

 当初は2005年中にリリースされるはずだったMontecitoのリリースが2006年中旬にスライドされたことで、その懸念がかなり現実味を帯びたのだが、そうした疑念をぬぐい去るためか、2005年9月に、主要ハードウェアベンダーを中心とするグローバルアライアンス「Itanium Solutions Alliance」が発足した(関連記事参照)

 Itanium Solutions Allianceに参加している国内の主要ハードウェアベンダーにとって、Itanium 2がターゲットとしている市場は、かつてメインフレームや独自のRISCベースサーバで取り組んでいた市場である。販売台数ではそれほど多くなくとも、実は巨大な富を生み出すメインフレームなどの事業は、今後確実に成長が鈍化する。しかし、売り上げの多くを占めるこの事業を手放すことなどできはしない。故に、彼らはそれに代わるものとしてItaniumを核とする基幹系の事業を位置づけたと考えるのが妥当だろう。見方を変えればこれはItaniumと心中するかのごとき動きだ。

 ここ数年、ITシステムのTCOの削減が声高に叫ばれているが、特に近年は、サーバ単体のコスト削減ではなく、システム全体のそれを削減するという動きが主流である。仮想化技術などはそれに大きく寄与することは疑いようもないが、こと基幹系のシステムにおいては、スケールアップで対応するという動きがしばらくは続くのではないかと予想する。そのとき、Itanium搭載サーバが選択されるような状態に持って行くことが、アライアンスの目的となるだろう。

 もう一つは、Sunの動向だ。企業が関心を寄せているのは、先に挙げたITシステムのTCOの削減だけではなく、そのパフォーマンスや価格性能比の向上も挙げられる。確かに64ビット機能を備えたサーバはこの辺りの要望にうまく応えるかもしれない。

 しかし、ハードウェアの低価格化に伴い、TCOの中で運用コストが占める割合は増加しつつある。消費電力あたりの処理性能が重要になってきた上、床面積あたりの処理性能も重要なポイントとなりつつあるのである。このあたりは、Sunが先日発表したUltraSPARC T1プロセッサ(コードネーム:Niagara)がかなり善戦するのではないだろうか。「OpenSPARC」プロジェクトで、UltraSPARC T1の仕様を公開することも、これまでにない取り組みということで非常に注目している。

 64ビット環境が当たり前となる2006年。プロセッサ戦争を制するのはどこか。興味は尽きない。

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