内部統制は情報システムにどうかかわるのか?丸山満彦の「内部統制」講座(2/4 ページ)

» 2006年01月06日 08時00分 公開
[N+I NETWORK Guide]

丸山 両者は「重なり合っている」とみるべきでしょう。「コーポレートガバナンス=企業統治」を意味します。そもそも企業とは、株主の所有物です。株主は自分たちの利益を最大にするために投資しますが、彼らが自ら経営できるわけではありません。そこで株主は、企業を効率的に経営するための専門家として取締役を選任します。

ガバナンスと内部統制の関係 ガバナンスと内部統制の関係

 取締役は、それぞれの分野の専門家(執行役)を選任します。たとえば財務を担当するのがCFO(最高財務責任者)で、ほかにもCOO(最高執行責任者)やCIO(情報統括責任者)などがいます。取締役が執行役を兼務することもあります。取締役は、株主のために最良な企業のあり方を考えるために経営者である執行役を配置するわけです。これが、株主のための経営が可能となるように取締役会を組成し、経営の実行者である執行役を選任し監督するというのが、ガバナンスの1つの考え方です。

 さらに、ガバナンスを実現するためにCEOが会社全体を管理しますが、これはどちらかというと内部統制の考え方です。COSOでは、内部統制の最終的な責任者をCEOとしていますが、同時に取締役会も内部統制に対する責任と役割があると指摘している点に注意しなければなりません。

N+I 企業統治の考え方が生まれた米国では、ガバナンスは実際に確立されているのですか。

丸山 企業により程度の差があります。また、ガバナンスのあり方にも多様な考え方があります。取締役は何人が適切か、どういう人が配置されるべきかという議論は以前から続いています。取締役会の議長とCEOが同じであるべきか否かの問題に対しても答えはありません。たとえばゼネラルモーターズでは、取締役会の議長とCEOが同じ人でもよいというルールがありました。しかし別の企業では、それらは別々であるべきだと規定している場合もあります。また、取締役の数は多いほうがよいとする企業と、反対に少人数で監督すべきという考え方もあります。

N+I そうした方法論に違いはあっても、ガバナンス自体を確立すべきだという認識は、米国では一般化していますか。日本はどうでしょう。

丸山 米国では確立していますが、日本では状況が異なるように思います。米国では「直接投資」がほとんどであり、企業は株主から直接お金を集めなければなりません。したがって、経営者は株主に対して、経営の詳細に関する説明をきちんとしなければならないのです。

 米国企業で取締役になる人は基本的に、MBA(経営学修士)の資格を持っていたり、自らベンチャーを起業したような企業経営の専門家で、日本企業のように、たとえば1人の営業担当者が年月を経て取締役に昇格するということはまれです。したがって、ある企業で取締役を務めた人は、別の企業に移っても取締役になるわけです。取締役は、株主に対して投資金額の還元を考えますが、現場のマネジメントを行う人は具体的な事業のプロセスを担うというように、役割分担が明確なのです。

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