急成長ベンチャーが実現した「未来の大企業」としてのERP導入 構造改革としての2007年問題(2/3 ページ)

» 2006年01月12日 06時00分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

事業ごとにビジネスの成否を判断したい

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 池田氏は、旧システムからERPをベースにした新システムに移行した理由について次のように話す。

 「旧情報システムに限界を感じた理由は、何よりも“企業は儲からないと駄目”という考えが背景にありました。2年ならまだしも、5年やって実を結ばなければその事業からの撤退も考えなくてはなりません。そのため、事業単位での損益はもちろん、将来的にビジネスとして儲かるかどうかを判断したいと考えてERP導入を決めました。気持ちとしては、メロンのように大きなものが1つというよりは、小さい房がたくさんあるブドウの房のような経営がしたいと思っています」(池田社長)

 具体的に、AS/400をベースに構築された旧システムの限界は、連結会計の実現が難しいことにあった。「ニッチだけどワールドワイドでやりたい」という池田氏は、右肩上がりの成長を考慮しながら、子会社を含めた連結会計を迅速に行うことが良好なビジネス展開を維持する上での最低条件だったと話す。さらに、株式公開を成功させるためにも、旧システムはそれに耐え得るシステムではなかった。

 「今年の売り上げは200億円規模になりそう。旧システムでは間違いなくパンクしてしまう」(同氏)

 そこで、2003年11月、ERP導入を決めた同社は、幾つかのERPパッケージを検討し、結果として、「標準技術を採用しているため、市場にエンジニアが多いこと」「仕様が公開されていること」を理由に、Oracle E-Business Suiteを採用した。

 池田氏によれば、特に製造業にとっては、「ソースコードに手を入れられることは最低条件」という。メーカーとして独自色を出そうとした場合、例えば、消耗品であるインクの扱いなどに関しても、標準仕様だけで管理するには機能的に限界があるとしている。

在庫管理は企業そのもの

 また、同氏は「在庫管理は企業そのもの」とも話す。旧システムでは、システムごとに別々にマスターデータを保有しており、極端なケースでは、企業内にもかかわらず同じ部品や製品に対して異なる品目IDを振っていた。これでは、全社的な観点で在庫水準を最適化することはできない。

 つまり、それがE-Business Suiteに求めた要件の柱の1つだった。複数存在してバラバラに稼働していたマスターデータを1つの統合マスターファイルに集約し、変更がある際は統合マスターファイルを変更するだけで、あらゆるシステムに内容が反映されることが理想的な業務環境だ。

 そして、的確な在庫管理をベースに、決算処理を短期化することも大事な要件だ。さらに、将来的に株式公開の実現も視野に入れている。

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