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» 2006年01月17日 11時48分 公開

Focus on People:Gartnerのマーク・ドライバー氏に聞く

Gartnerの副社長兼リサーチ・ディレクターのマーク・ドライバー氏にIT部門におけるオープンソースソフトウェアについて聞いた。

[Lauren-Rudd,japan.linux.com]
SourceForge.JP Magazine

 先月開催されたGartnerの2005 Open Source Summitにおいて、同サミットのホスト役を務めた同社副社長兼リサーチ・ディレクターのマーク・ドライバー氏はIT部門におけるオープンソースソフトウェアについて講演し、興味深い予測を披露した。本誌は同氏にインタビューし、IT部門へのOSSの浸透について、また今後のサミットについて尋ねた。なお、本記事では、表現を簡潔にし時間を節約するため、同氏と合意の上、同氏の講演資料を引用して回答を補うこととした。

 ドライバー氏は、サミットでの講演で4つの定量的な予測を提示した。

  • 2010年までに、一般IT部門の75%が、オープンソースの調たちと管理に関する公式の戦略を持つようになる。この予測の実現可能性は80%と見込まれる。

  • 2008年までに、オープンソースによるソフトウェアソリューションは、あらゆるインフラストラクチャ市場においてクローズドソース製品と直接競合するようになる。この実現可能性も80%と見込まれる。

  • 2010年までに、インフラストラクチャを中心とするソフトウェア投資において、一般IT部門がオープンソースソフトウェアを検討する割合は80%に達する。実現可能性は少し低く70%。

  • 2010年までに、Global 2000企業の75%において、基幹的ソフトウェアポートフォリオにオープンソースが含まれるようになる。実現可能性は90%。

ITMJ オープンソースソフトウェアがビジネスに浸透しつつありますが、その要因は何だとお考えですか。

ドライバー OSSに対する関心が膨らんだのは、主として、OSSが個別のニーズに対応でき短納期かつ低価格なITソリューションだと受け止められたためでしょう。短納期と低価格については必ずしも正しいとは言えませんが、次の諸要因も相まってOSSに対する関心が高まりました。

  • ・一部の大手ベンダが有期ソフトウェアライセンスを導入したこと

  • OSSをサポートするベンダが活発な販促活動を繰り広げたこと

  • Microsoftを独占体質の企業として糾弾する訴訟が提起されたこと

  • 技術関係の支出が金額に見合うだけの成果を生んでいないという認識が行政機関の一部に生まれたこと

  • OSSソリューションを認知するビジネスユーザーが広がったこと

  • サポートされているOSS製品の種類が拡大したこと

 しかし、オープンソースの流れが強くなるにつれ、ITマネージャーが抱える問題は、オープンソースの利点を考慮すべきか否かから、IT業務の課題を解決するためにはオープンソースをいつ、どこで、どのように活用すべきかへと広がっています。

ITMJ OSSの普及を妨げる要因は何でしょうか。

ドライバー ソフトウェアプロバイダにとって、OSSは脅威であると同時に、好機でもあります。特に問題となるのは、定着した制度である知的財産権との共存でしょう。知的財産権は今もIT業界の根幹であり、これが大きな軋轢を起こします。オープンソースモデルは、通常モデルの技術が大勢を占める中で、問題への対応能力を持ち、しっかりした基礎のあるところを示さなければなりません。 また、一部のオープンソース製品では、現行ソリューションから移行する際に発生するコストがよく問題になります。オープンソースの投資収益自体は大きくても、移行に伴う初期コストによって相殺されてしまうことが多いのです。とりわけ、既存技術のプロバイダに深く依存している場合に顕著です。このため、オープンソースの成長は既存市場では遅く、新興市場では速い傾向があります。 しかし、最も大きな障害となるのは、何と言ってもソフトウェア特許でしょう。ソフトウェア特許は、法的制約によってソフトウェアサービスの普及を阻みます。自由市場における競争によってではありません。ところが、オープンソースは、自由に利用可能な仕様と標準に大きく依存しているのです。

 明るい材料もあります。OSS技術を前進させる上で大きな力となる要素が生まれているのです。例えば、既存技術との整合性が向上していますし、ソフトウェアベンダがオープンソース製品を自社のソリューションに取り込んでいることも追い風になります。中には、主力製品をオープンソースライセンスで提供するベンダもあります。

ITMJ IT部門がOSSに関心を示す理由は何でしょうか。

ドライバー OSSに柔軟性があり調たちコストが低いことが主因でしょう。しかし、多くの事例でオープンソースアプリケーションの導入が妥当だと思われるのは、技術力のあるIT部門が特定の要件を満たすソフトウェアを必要とする場合に限られます。オープンソースではその製品を提供するメーカーがなくサポートを受けることができませんが、自社に技術力があればメーカーの不在によって生ずるリスクはほとんどないからです。したがって、OSSが広く受け入れられるかどうかは、OSSが技術だけでなくビジネスにおいても成熟するかどうかにかかっています。それができれば、 OSSを使用することによるリスク水準は低下し、一般企業でも受け入れられるでしょう。

ITMJ そのとき、WindowsとWindowsベースのアプリケーションはなくなりますか?

ドライバー Linuxは浸透しつつありますが、ほとんどの企業では、Windowsの置換はさほど進んでいません。しかし、ご存じのように、企業での利用を俯瞰すると、2種類の中規模オペレーティング環境が主流になっています。具体的には、Linuxと Windowsです。Unixがなくなることはないでしょうが、データセンターという限られた領域に後退しつつあります。一方、Linuxは、この10 年で、維持に必要な普及水準を超えるでしょう。今のところ、Linuxに代わりうるだけの影響力のある技術は見当たりません。

 したがって、ほとんどの一般IT部門においては、オープンソースに「するかどうか」という長年の懸案は2010年までには決着するでしょう。そのころまでに、OSS製品は一般企業の75%以上で定着していると思われます。そうした企業の多くがオープンソースに大きく依存しているとは思いませんが、ほとんどの企業は従来のクローズドソースのソリューションとともにOSSベースの製品を活用しているでしょう。

ITMJ OSSの採用を検討する際、IT部門はどのような要素を考慮すべきでしょうか。

ドライバー 次の点が重要です。

  • オープンソースは、全社レベルのビジネス戦略から切り離して考えてはならない。オープンソース問題を分離すれば、対立と失敗が待つのみ。

  • どの場合にどのオープンソースライセンスを用いるか(好ましいものと避けるべきものを明確にする)について、高水準の政策と法的監査手続きを確立しなければならない。

  • オープンソースソリューションを検討する際の扱い方は、市場の成熟と各製品のリスク報酬比予想に基づいて決定されなければならない。例えば、基幹サーバ環境にLinuxを採用する場合の現行のリスクとコストは、デスクトップを入れ替える際に発生するリスクとは異なる。

  • オープンソースソリューションに関して、信頼できる好ましいプロバイダを確実に確立する必要がある。例えば、IBM、Novell、Red Hatなどの企業と取引するリスクは、未知あるいは匿名のWebサイトからLinuxをダウンロードする際のリスクとは異なる。

  • 自社の技術力および互助的なコミュニティー・サポートで維持管理可能か、オープンソースベンダとの契約によるサービスおよびサポートに頼るべきかを選択する必要がある。OSSでは、ユーザーはソフトウェアの管理権という大きな力を得ることができるが、それにはコストがかかり、「無償」のはずのソフトウェアの経費が急速に膨れあがることがある。

ITMJ 今回のサミットのでき映えはいかがでしたか。また、今後の計画にお話しください。

ドライバー 期待通りのサミットでした。200を超える参加者がありましたから、今後は、年に2回、西海岸と東海岸で1回ずつ、こうしたサミットを開催しようと思います。さらに言えば、サミットよりカンファレンスにしたいですね。つまり、開催期間と内容を充実させたいと思います。実際、来年(2006年)は、Application Development Conferenceの一環として開催することになるでしょう。

ITMJ 参加対象を変えるということでしょうか。

ドライバー いいえ、今回のサミットと同様、今後のサミットあるいはカンファレンスでも、対象とするのはITマネージャーやCTOやCIO、そしてCEOやCFOです。つまり、参加型の技術的会合ではなく、ITマネージャーのニーズに応えるのが目的です。

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