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» 2006年01月25日 12時51分 公開

こんな時期だからこそ知っておきたい企業のファイナンス:取引先に対する新株発行、注意すべきポイントは? (1/2)

事業拡大のためには資金が必要。企業が活動資金を得る方法としては、外部からの借り入れである銀行借り入れ、社債の発行などのほか、新株を発行して増資を図るといったものがありるが、それらの方法について注意すべきポイントをまとめる。

[第一法規]

lalalaw当社は事業拡大のため、新たに資金を必要としています。銀行借り入れのほかに、取引先や友人などに新株を引き受けてもらい、これで事業資金をまかないたいと考えていますが、この場合に注意すべきことは何でしょうか。


lalalawご質問のように株主以外の者に新株を発行する場合には、それまでの株主構成が変わり、会社を支配し得る地位に変動が生じることがあります。したがって、誰にどの程度新株を発行するのかについて、慎重な吟味が必要です。会社にとって重要な事項(特別決議事項)を決定することを考えると、総株主の議決権の3分の2以上を掌握することが必要です。また、その発行価額についても、既存の株主保護の観点から、公正な価額による発行が原則であり、特に有利な価額での発行は株主総会の特別決議(総株主の議決権の過半数に当たる株式を有する株主が出席し、その議決権の3分の2以上をもってする決議)が必要になります。

解説

1.会社の資金調達方法

 会社がその活動資金を得る方法としては、外部からの借り入れである銀行借り入れ、社債の発行などのほか、新株を発行して増資を図るといったものがあります。

 新株発行による金融のメリットは、会社の解散などによる清算の場合以外は、株主に対し出資の払い戻しという問題が生じないこと、配当についても会社の経営状態によっては必ずしも行わなくても済むなど、柔軟な運用が可能な点です。

2.第三者割当の具体的な方法

 新株を取引先や友人などに引き受けてもらう方法としては、これらの人に新株を割り当てる「第三者割当」の方法と、公募による新株発行の形式を取りつつ、「縁故募集」を行うという方法とがあります。

 いずれの場合も、貴社が株式の譲渡制限を定款で規定している場合には、株主が新株引受権を有しているので、株主総会の特別決議をもって、第三者割当、または一般公募を決議する必要があります。また、特に有利な発行価額をもって新株を発行するときには、これに関して株主総会の特別決議が必要で、その際、取締役は、株主に対し、その必要な理由を開示しなければなりません。

 実際上、公募の縁故募集の場合、特に有利な発行価額で新株を発行することはあまり例がないため、有利発行の場合には、第三者割当の方法を取ることが多いでしょう。

3.それぞれの利害得失

 第三者割当とは、株主以外の者、つまり特定の第三者に対して新株引受権を与えて新株を発行することですが、この第三者がたまたま株主であってもそれは株主割当ではなく第三者割当です。要するに「特定の」第三者に幾らで何株引き受けさせるのかを、あらかじめ決めた場合の方法です。

 株主構成に変動を生じることは縁故募集と同様ですが、確実にその構成の変動を予測できますので、会社支配に変動を及ぼさないように割り当ての方法を決定すれば良いわけです。半面、このような協力を求められる第三者は、例えば従業員に株式を持たせる場合のように会社と極めて深い関係にある場合が多いでしょうから、株式の一般的な評価額(公正な価額)で、割り当てに応じてもらうことにはなじまない面もあります。

 一方、縁故募集とは、公募の形式を取りつつ、公募の範囲を例えば「当会社の取引先から募集する」とするなど、一定の縁故範囲に限定するものです。この場合、会社は特にその方法を定めない限り、いわゆる「割当自由の原則」に基づき、応募してきた縁故者の誰に何株割り当てるかを自由に決定できます。最も、実務では申込時に発行価額と同額の申込証拠金を申し込みを取り扱う金融機関に払い込ませ、申し込みが募集総数に達すると募集を打ち切り、証拠金を払込期日に払込金に振替充当するのが一般ですので、割り当てについて特段の考えがあるときは、申込取扱機関との十分な打ち合わせが必要でしょう。

 この方法による場合の縁故者の範囲は、第三者割当の場合より拡大されるため、当然、会社との関係も第三者割当の場合ほど濃密でなく、応募するかどうかも縁故者の判断に委ねられます。このため、発行価額の設定も、株式の一般的な評価額近くで行われるのが通常で、会社の資金計画に資することになります。しかし、あくまでも応募を前提にしているため、必ずしも会社側の目論見どおりの株主構成とならない割り当てになる場合もあり得ます。

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