人材募集:コントラリアン求むマネジャーの教科書(1/2 ページ)

IT部門の能力アップに関心を持つCEO諸氏、ITコントラリアンなる新たな職位を設けたらいかがだろうか。大方の会社では耳慣れぬコンセプトだろうから、この職位を提案する論拠とともにその仕事に求められる責任の範囲、役割、技能を検討してみよう。

» 2006年02月22日 13時55分 公開
[John-Murray,IT Manager's Journal]
SourceForge.JP Magazine

 さて、IT部門の能力アップに関心を持つCEO諸氏に一つ提案がある。ITコントラリアン(contrarian = 反対の見解や立場をとる人)なる新たな職位を設けたらいかがか。コンサルティング会社には似たような職位(品質保証マネージャー)が存在するが、大方の会社では耳慣れぬコンセプトだろうから、この職位を提案する論拠とともにその仕事に求められる責任の範囲、役割、技能を検討してみよう。

 ITアプリケーションのプロジェクトでは、当該業務に付き物のリスクを徹底分析せずにプロジェクトをそのまま承認することが珍しくない。ITアプリケーションのプロジェクトを提案するときは、メリットを並べ立て、リスクについては黙殺しないまでも、できるだけたいしたことないかのように話すのが普通だ。

 マーケティング手法としては効果的でも、プロジェクトの初っ端で見過ごしたリスクが消えてなくなるわけではない。後になって立ち現れるのはほぼ確実だ。そうして姿を現したリスクはプロジェクトの進行とともに深刻な問題へと発展する。コントラリアンの活動は、提案されたプロジェクトにリアリティを与える手段と位置づけられる。

 それほど多くのITプロジェクトを見たわけでないが、理屈上、プロジェクトのメリットと潜在的問題点を前工程で十分時間をかけて検討すればプロジェクトが成功するチャンスは高まるだろうから、ITプロジェクトを成功に導く可能性があるならどんな方法であろうとも慎重に検討すべきである。

責任の範囲と役割

 コントラリアンが果たすべき職務とは、提案されたITアプリケーションの全プロジェクトについて、それらが承認される前に入念な検討が確実に行われるようにすることである。新規のアプリケーションだけでなく、既存のアプリケーションの改訂もその範囲に含まれる。さらに、検討すべき対象は社内だけでなく社外にもおよび、購入したソフトウェアの成果物も対象となる。

 コントラリアンの活動では、提案されたプロジェクトの実現可能性に焦点が当てられる。焦点がずれぬよう、以下の点を押さえて調査することが大切である。

 プロジェクト提案書添付の開発計画を入念に調査する。

 プロジェクトの予算案とライフサイクルを現実に即して検討する。

 提案されたプロジェクトと当該ビジネス機能との間にずれはないか、また会社としての目標は何か。この点を詳しく調査する。例えば、調査対象のプロジェクトが、一連の新たなIT技術導入を目標に掲げていたとする。このとき、そのようなやり方が会社の長期的利益にかなうかが問題となる。また、新技術への移行時に生じるストレスについて、当該技術への適合性と企業文化の対応能力も検討する必要があるだろう。

 IT部門と各事業単位にプロジェクトの運営に必要な管理能力が備わっているか検討する。

 プロジェクトの進行に支障を来す要素がIT部門、関連事業単位、経営陣の文化的側面に存在しないか。プロジェクトのストレスに会社が耐えられるか、文化的観点から検討する必要がある。

 プロジェクトへの支援を社外に求めるか? また、その規定がない場合、どう対応するか?

 しかし、プロジェクトの成否と最終品質を予測することはコントラリアンの職務範囲に含まれない。プロジェクトの成否と品質は、あくまでもプロジェクト・チームの問題である。プロジェクトをこのまま進めるかどうか、提案書を書き直すかどうか、活動を中止するかどうか。こうしたこともコントラリアンの職務範囲には含まれない。

 プロジェクトのさまざまな構成要素を分析し、その分析結果を組織の技術水準や能力と突き合わせて評価し、プロジェクトの実現可能性に関して分析リポートを提出する。ここまでがコントラリアンの役割である。プロジェクトを承認するかどうか、中止するかどうかは経営陣の責任で決定される。

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