重要なのは競争より差別化強い中堅企業のIT化シナリオ(2/2 ページ)

» 2006年03月03日 15時00分 公開
[宍戸周夫,ITmedia]
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 しかし米国では、優秀な学生は大企業には入らない。自ら起業する。そして、マイクロソフト、ヤフーなどを見るまでもなく、大学生が起業したベンチャーが国の経済そのものをけん引している。日本が長らく景気低迷にあえいでいたのと対照的に、こうした起業家たちが米国経済を世界ナンバーワンに押し上げてしまった。

 経済というフィールドで見れば、日本も条件は同じだ。日本でも、中堅・中小企業には大企業に勝る部分がたくさんある。組織が小さいから、何よりも素早い意志決定ができる。部門間の調整などが必要ないから、製品開発に手間取ることもない。技術革新によって新たな市場を作り出す可能性も高い。

 一方で、大企業病という言葉があるように、大企業は拭いきれない病巣のようなものを宿命的に抱え込んでいる。新規事業を立ち上げるとき、既存の枠にとらわれない社内ベンチャーを組織化するというケースがある。これはとりもなおさず、大企業自身が中堅・中小企業の利点や優位性を認めていることになる。

競争より差別化

 そこで、中堅・中小企業がまず目指すべきことは、その分野では誰にも負けない技術やノウハウを持つことであろう。それによって結果的に企業規模が大きくなり、松下電器のように、「気付いたら大企業になっていた」という例もあるが、最初から企業規模の拡大だけを考えるのは本末転倒である。

 ライブドアの堀江貴文氏が今日の事態を招いた原因は、「時価総額世界一」を目指したことにあった。証券取引法違反に問われるまでしてナンバーワンを目指すという手法には、明らかに誤りがあったと言わざるを得ない。

 中堅・中小企業が目指すべきは、ナンバーワンではなく、むしろオンリーワンである。東京大田区や大阪の東大阪市には、たとえ零細企業であっても誰にも負けない技術を持った人たちがいる。欧米の要人が来日したとき、好んでこのような場所を訪れることには理由がある。

 その理由とは、日本の大企業のトップがシリコンバレーのベンチャー企業を訪れるのと同じである。ナンバーワン企業については、同じような企業があちらこちらに転がっているが、オンリーワン企業は、実際に訪れてみないと分からない。

 そして、オンリーワン企業には、これまたユニークなIT手法がある。ITによって新たなビジネスモデルを作り出すe-ビジネスを展開する企業はもちろんだが、レガシーなビジネスモデルを新たなビジネスモデルに変身させるITがあり、レガシーなビジネスモデルを支えるITもある。そこには、大企業が一律のビジネスモデルに基づき、護送船団方式で市場を閉鎖的に独占しているのとはまったく違う世界がある。

 次回からは、事例から中堅・中小企業のIT化シナリオを具体的に検証していく。

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