中堅・中小企業の課題は結局すべて「人」に行き着く……強い中堅企業のIT化シナリオ(1/2 ページ)

前回に続き、数多くの中堅・中小企業のIT化を支援してきたITコーディネータ、PA情報システムの田中渉氏に話を聞く。意外と知られていない公的支援制度とITコーディネーターという制度に注目したい。

» 2006年03月17日 08時50分 公開
[ロビンソン,ITmedia]

 オンラインムック強い中堅企業のIT化シナリオ

ロビンソン

 前回に続き、数多くの中堅・中小企業のIT化を支援してきたITコーディネータ、PA情報システムの田中渉氏に話を聞く。

 ある中規模製造業に取材した際の話。IT化について経営者に話を伺うと次のような答えが返ってきた。

 「ITについて詳しい人間もいないし、相談相手もいない。結局、手つかずのままここまで来てしまった」

 一方、東北地方や北陸地方を中心に事業を展開する中堅システムインテグレーターの営業部長の話にも耳を傾けてみよう。

 「経営者によってはIT化を最初から敬遠している人もいる。もちろん、興味があって詳しい話を聞きたいと思っている経営者もかなり存在する。まずは、企業とわれわれが出会うことのできる場を作ることが大切だ」(中堅システムインテグレーターの営業部長)

 これに対し、田中氏も次のように述べる。

 「経営者にとってIT経営の相談相手がいないのが一番の問題。残念ながら、ITコーディネーターも、まだまだ知られていないので……」

意外と知られていない公的支援制度とITコーディネーター

 平成17年3月、経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の中小企業の情報化投資活性化事業であるITSSP(ITソリューションスクエアプロジェクト)が幕を閉じた。平成11年からスタートしたこの事業では、各地域の施設において、IT事例発表や経営者研修、ITコーディネーターによる経営診断などが実施されていた。経営者が専門家と出会う場として定着し、経営者同士の交流の場としても盛んに利用されてきた。

 「現在の出会いの場は、“IT経営応援隊”(経済産業省、IPA、ITコーディネーター協会の共同事業)に引き継がれています。しかし、認知度はまだまだ低い」

 「IT経営応援隊」は、全国9地域に事務局が設置され、中小企業の経営改革とITの利活用を支援している。

経済産業省が推進するIT経営応援隊のホームページ

 一方で、田中氏はIT導入に関する資金面についても言及する。

 「例えば、IT導入に関する公的支援制度に関しても知らない経営者が多いのが実状です」

 代表的な支援制度の1つが、経済産業省が実施しているIT活用型経営革新モデル事業だろう。公募になるが、審査に通過すれば経営革新に必要なIT導入費用の2分の1の額(事前調査研究事業:1件あたり100万円〜500万円/経営革新支援事業:1件あたり300万円から3000万円)が補助される。また、臨時措置法である中小企業新事業活動促進法を活用した助成金制度もある。

 例えば、中小企業が異分野の企業、大学、研究機関、NPOなどとそれぞれの「強み」を持ち寄って連携し、新しい市場への展開を目指して高付加価値の製品やサービスを創出する新事業活動を支援(新連携支援)している。2月27日時点で161件の認定件数を数える。

 そのほか、各自治体でも融資制度や優遇税制を実施しているケースも多い。このあたりは、中小企業庁のポータルサイト「J・Net21」で検索できる。

 「手っ取り早く、相談相手を見つけるならば取引のある金融機関が最適。日々の雑談などの中で、IT導入を検討していることを切り出せば、それがきっかけになってコンサルタントなどを紹介してくれることもありますし、公的支援についても教えてくれるかもしれません。地銀や信用金庫などの金融機関にとって取引先企業が成長していくは喜ばしいことですからね」

 田中氏の場合は、異業種交流会などで経営者と出会うケースが多いという。また、最近では、前述にもあるように、IT経営応援隊の活動を通し、金融機関からの紹介で中堅・中小企業のコンサルに出向く機会も増えているという。

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