中堅・中小企業の課題は結局すべて「人」に行き着く……強い中堅企業のIT化シナリオ(2/2 ページ)

» 2006年03月17日 08時50分 公開
[ロビンソン,ITmedia]
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経営者に求められるのは「気づき」と「整理」

 「中小企業や中堅企業におけるIT化に足りなかったのは戦略。この最も重要な部分が中抜きにして事を進めていたからうまくいかなったのです。現場レベルではなく、経営戦略のPDCAサイクルを確立できる体質へと変えていかなくてはなりません。そうすれば、身の丈にあったIT化ができるはず」

 田中氏のいう「身の丈にあったIT化」とは、自社のサイズに最適な投資を意味している。戦略がなく、現場やベンダーに振り回されるIT化は、過剰投資を繰り返し、まったく成果のあがらない無用の長物を生み出ししまう。

 「だから、自らの業務を見つめなおすことを勧めています。わたしはよくクレーム処理に例えて、お話させて頂いているのですが、クレームを受けつけても放置しているような会社ではいくらITを導入したところで何も変わらない。クレームに対して迅速に対応できるようになるには、自社の業務をどのように変えなくてはならないのか。それには、どのような仕組みが必要なのか。そこで、初めてITの話が始まる。だから、わたしは“IT導入プロジェクト”という言葉を使いません。“IT活用による経営革新プロジェクト”です」(同氏)

 田中氏は自らを「整理屋」と呼んでいる。

 「経営者の考えていることを整理してあげる」からだという。冒頭で述べたように、経営者は誰しも自分なりの想いや理念を持っている。特に、一代で築き上げた中小企業や中堅企業の場合は、その想いや理念はことさら熱い。

 「その想いや理念を実現するためのシナリオを描けない。だから社員にも伝えられないし、具現化もできない。しかし、頭の中を整理してあげるとクリアになっていきます。まず、最初に認識してもらいたいことは次の3つです。1.IT導入ありきではなく、経営戦略が大前提2.業務プロセスを変革し、ITを活用できる土壌を作る3.IT経営とはビジネス競争力を常に高めるPDCA活動の定着を意味する」

 この前提のもとにIT導入を進めれば、一朝一夕では済まないことがよく分かる。そして、何よりも大切なのは、IT経営の重要性に気付くこと。そして、頭の中で目標達成までのシナリオを整理していくことだ。

 「経営者とITの話をしても、結局は人と組織の話に行き着きます。中小企業や中堅企業にとって人材は大きな問題です。例えば、人材育成を今年度経営計画に組み込んでいきましょう、とわたしが提案してもそれが売上に反映されるのは3年後、5年後のこと。この時、いかにその目標地点をしっかり見据えることができるかが分かれ目となりますね。目先だけを見ていれば、間違いなく頓挫してしまうでしょう。どんな会社を目指すのか、という強い理念や信念こそが、業務変革を成功させる最も重要な要素なのかもしれませんね」

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