Sun、公開版グリッド立ち上げで「コンピューティングの大衆化」へ

Sunは来週、「CPU 1個に付き1時間1ドル」のグリッドサービス公開版を開始する。誰でもSunのサーバの処理能力を利用できるようになる。

» 2006年03月17日 14時21分 公開
[Jeffrey Burt,eWEEK]
eWEEK

 米Sun Microsystemsは来週、待望のホスティング型グリッドコンピューティングサービスの公開版を立ち上げ、あらゆる人がSunのWebサーバを介して膨大な処理能力を利用できるようにする。

 CPU 1個に付き1時間1ドルというこのサービスは、Sunが昨年初めに「Sun Grid」戦略を発表したときの要だった。

 同社は昨年からこのグリッドの商用版――ある関係者はこのプロジェクトの「軽量」の部分だと呼んでいる――を運営しているが、セキュリティなどの懸念から、公開版の立ち上げは今に至るまで遅れていた。

 このグリッドにアクセスするポータルは来週オープンされるが、関係者は日にちを明かすことは避けている。これまで大手企業は、Sunに連絡してグリッドの一部を予約することができたと、Sunのユーティリティコンピューティング上級ディレクター、アイスリング・マクラネルズ氏は語る。

 公開版の立ち上げで、「インターネットにアクセスできる人なら誰でも、数千のCPUにアクセスできるようになる」と同氏は言う。

 ユーザーはサインアップでき、登録が済んだら――最大で1日かかる可能性がある――自分のアプリケーションをグリッドに載せて処理を実行できる。

 処理が終了すると、PayPalアカウントで支払いをしてアプリケーションを削除できる。Sunは顧客が利用したグリッドの部分を片付けて、次のユーザーが使えるよう準備する。

 「究極のコンピューティングの大衆化だ」とマクラネルズ氏は語る。Sunは初め、公開版グリッドを米国で開始し、約6カ月以内に英国でも立ち上げるという。

 Sun Gridは現在、3カ所のデータセンターで約7000個のCPUを提供している。データセンターではAMDのOpteronプロセッサを搭載したSun Fireサーバを走らせている。

 Sunは年内に、UltraSPARC T1プロセッサ――コードネームで「Niagara」と呼ばれていた――を採用したサーバでこれらサーバを補完する予定だ。UltraSPARC T1は、4個の命令スレッドを同時に実行できるコアを8個まで搭載できる。

 これはSunのグリッドコンピューティング推進戦略の最新の動きだ。この戦略は2000年、同社が変動料金制インフラを導入した際に始まった。その次のステップとして、Hewlett-Packard(HP)やIBMなどのライバルの取り組みと同様に、コンピューティングリソースをオンデマンドで提供する商用グリッドが始まり、それにポータルアクセスモデルが続く。

 さらにSunは昨年、Sun Gridのエコシステムを拡大するためのパートナー・顧客向けプログラムを発表し、顧客にオンサイトで提供して、グリッドコンピューティングを体験してもらえる構成済みのグリッドシステム「Grid Rack System」を立ち上げた。

 Pund-IT Researchのアナリスト、チャールズ・キング氏は、Sunの最大の課題は、ホスティング型ITインフラの利用は理にかなっていると潜在顧客に納得させることだと指摘する。

 企業は新しいシステムを購入したり、スタッフを雇わずに済むために費用を節約でき、サーバに付随する環境コスト(電力や冷却)を心配せずに済む。

 難しいのは保守的な企業幹部に新たなモデルを試してみるよう説得することだとキング氏は言う。

 さらに、Sunがグリッドを取り上げ始めてから数年のうちに、コンプライアンスの優先順位が高まった。このため企業は、共有インフラ上で他社のデータの横に自社のデータを置くことにますます慎重になっていると同氏は指摘し、ほとんどのベンダーはこの問題を解決したと付け加えた。

 「このようなホスティング型サービスを利用すれば、グリッドを採用する金銭的な理由を主張できる。(しかし)企業の大半はデータを管理下に置いておく方を望んでいる。これは技術の問題というより文化の問題だ」(同氏)

 マクラネルズ氏は、Sunにはグリッドへのアクセスを求める顧客がたくさんいると主張したが、その数を明かすことは控えた。公開グリッドの立ち上げが遅れたことで、Sunにとっては、より管理された環境で商用グリッドによってこの技術をテストできたというメリットがあったという。

 キング氏は、グリッドプロジェクトの成功は、名声だけではなく金銭的な点でもSunにとって重要だと語る。

 「同社はどこから得られるものであれ、売上高を必要としている。このため、健全なホスティング型サービスを用意することは重要だ」(同氏)

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