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» 2006年03月28日 14時33分 公開

アートの学生にGNU/Linuxを (1/2)

アート系の学部で教える一介の教師が、授業で使用するほぼすべてのソフトウェアをフリーソフトウェアへと移行した。その胸躍る冒険の旅の記録と、学生の反応をまとめた。

[Gurdy-Leete,japan.linux.com]
SourceForge.JP Magazine

 私はアート系の学部で教える一介の教師だが、前学期から胸躍る冒険の旅に出ている。というのは、デジタルメディアラボにあるほぼすべてのMacintoshからMac OS Xを削除し、Ubuntuをインストールしたのだ。

 ソフトウェアを入れ替えようかと真剣に検討し始めたのは昨年度のことだ。今出回っているフリーソフトウェアプログラムであれば、私のクラスの学生には十分だということが分かったからである。アート系学部の学生も、PhotoshopやQuarkXpressやDreamweaverのようなプロプライエタリなプログラムではなく、GIMPやScribusやQuanta Plusといったフリーソフトウェアプログラムを学ぶ時代になったと考えたのである。

ディストリビューションとアプリケーションの選定

 まず検討したのは、GNU/Linuxのディストリビューションである。一クラス分の学生たちが毎日現実的な課題に取り組むときに使うシステムであるから、それに耐えられるものでなければならない。

 調査は、PowerPCアーキテクチャー用のディストリビューションを列挙したPenguinppc.orgの一覧表のお陰で短期間で終了した。Ubuntuを採用することにしたが、それは自宅のコンピュータで試してみてインストールやアップデートが容易であったこと、そしてUbuntuには多くのPowerPCユーザーがいてUbuntuオンラインフォーラムからのサポートが期待できることが分かったからである。

 次に、授業で使うアプリケーションを選定した。PhotoshopとPainterに代わるデジタルのペイントツールや画像編集ツールにはGIMPを選んだ。これは当然の選択だろう。しかし、Kritaに興味深いペイント機能が搭載されるそうだから、来年度はこれも教えようかと考えている。

 FreeHandに代わるベクター・グラフィックス・デザイン・プログラムとしては、Skencil、Inkscape、Sodipodi、OpenOffice.orgのDrawがあるが、私はInkscapeを選んだ。ユーザーインタフェースとTile Clonesなどの機能が大きな理由だが、簡便かつ有用で示唆に富む指導書のようなヘルプメニューもいい。

 QuarkXpressに代わるページ・レイアウト・プログラムは、ScribusとPassepartoutにした。Scribusの完成度をかなり高いと見ての選択であり、よい判断だったと思う。その際、Cenonについても検討したが、それきりで、以降取り立てて調査はしていない。しかし、Scribusは十分期待に応えている。

 Dreamweaverの代わりにはBluefishとNvuとScreemを検討したが、選んだのはQuanta Plusだった。ユーザーインタフェースとプロジェクト管理機能が優れているからである。

 FontographerやFontLab Studioに代わるタイプフェース・デザイン・ツールは、FontForgeが唯一の選択肢のようだ。しかし、やむを得ない選択ではない。FontForgeは、Fontographerに触発されて作られた優れたツールなのである。

学生たちの反応

 今回のソフトウェアの入れ替えで、学生たちはますます元気になったようだ。ソフトウェアの品質が高くアップグレードも共有も変更も自由にできることから、学生たちは自信を深めている。私が選んだソフトウェアだけでなく、そのほか多くのGNU/Linuxのマルチメディアソフトウェアが使えることも、学生たちは歓迎している。そうしたアプリケーションを熱心に利用する学生たちのなんと多いことか。Synapticを介して1万6000を超えるパッケージを揃えるUbuntuリポジトリからソフトウェアをインストールしているだけではない。どこからか手に入れたソースコードをコンパイルすることさえあるのだ。

 各コースが始まるころにインストールフェスタの期間を設けたが、嬉しいことに、多くの学生が自分のコンピュータにフリーソフトウェアをインストールしていた。また、shipit.ubuntu.comから無償のUbuntuディスクを数十枚送ってもらい、友人にも渡すようにと学生に配ったが、すぐに捌けてしまったのも嬉しいことだった。下級生にとっては、自分のコンピュータにソフトウェアをインストールしておけば授業以外でも使える。しかも無料だ。上級生は、フリーソフトウェアに切り替えたことで新しい機能が使えるようになり、しかも自由度が増したと考えている。

 業界標準のアプリケーションを学んだ方が就職に有利ではないかと尋ねられもしたが、私は次のように答えた。すなわち、この学部では4年生になると就職に備えて自分で選んだ技術を学べる期間が1学期間あり、フリーソフトウェアパッケージを学んでいれば、希望に応じてその1学期間でプロプライエタリ版に習熟するのは難しいことではないだろうと。今、最初の「GNU/Linux転換」学生たちが就職準備の学期に入ったところだ。私は、彼らが十分な成果をあげるだろうと楽観している。

 確かに、わたしたちが長年使ってきたPhotoshopなどのプロプライエタリなソフトウェアパッケージは、今回導入したフリーソフトウェアよりもインタフェースが洗練されており機能面でも先行していることが多い。今回の入れ替えでも、それは明らかだ。しかし、私のクラスで必要な基本的機能に限れば、フリーソフトウェアでも十分すぎるほどであり、プロプライエタリなソフトウェアにはない望ましい機能を持っていることも少なくないのだ。

 今回の切り替えで、ソフトウェアのアップグレードに要する数千ドルが浮いたため、クラスのラボ費用を大幅に引き下げ、その代わり学生たちにはテキストを購入するよう求めた。このテキストのお陰でクラスでの活動を充実させることができた上に、学生が負担した費用はそれを含めても従来より大幅に少なくなった。だから、学生たちは大喜びだ。

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