「一点豪華主義」から始める中堅企業のIT化強い中堅企業のIT化シナリオ(3/3 ページ)

» 2006年03月28日 17時11分 公開
[鍋野敬一郎,ITmedia]
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シナリオ:一点豪華主義から始める中堅企業のIT化

 何度も繰り返しているが、中堅企業のIT化には大手企業とは違って制約条件が多い。特に予算については厳しいものがある。筆者は、中堅企業のIT化は一点豪華主義から始めるべきであると考えている。

 企業におけるIT戦略は、経営戦略を具現化し、事業活動の効率を最大化するために必要不可欠である。IT対応の遅れが海外拠点の立ち上げを遅らせたり、製品出荷国ごとに異なる環境規制に対応するための品質管理情報を迅速に提出できず、チャンスを逃したりするようなケースが存在する。

 これはIT化の遅れが事業拡大の足を引っ張る例であり、ビジネス環境の激しい変化にはIT対応なくして対処できないことを示すものだと考えられる。内部統制対応でも、日本版SOX法では「IT化への対応」を明記される予定だ。そうなると、中堅企業でもIT化は必須になる。その場しのぎでツールを導入するのではなく、自社の強みとなる分野には、高い性能を持つソフトウェアを思い切って、一点豪華主義で導入することを検討することも有効だ。

 実際に製造業では、工作機械などの製造設備については一切の妥協をせず、最良の設備を整え、カタログスペックをはるかに超える製品を製造しているような例が日本には多数存在する。良い製品を造るためには、良い設備をフルに活用してカタログスペックを超える機能を引き出すことが重要であるという。

 高機能で汎用品とは比較にならないハイレベルな製品は、高付加価値であるがゆえに価格も高く、「ものづくり」にこだわりを持つ日本の製造業の特徴だといわれている。

 「NASAのスペースシャトルは大田区の職人技なくしては飛ばない」という話を聞いたことがあるが、これは日本の中堅・中小企業の持つ技術力の水準の高さを裏付けるものである。ITも設備と考えるならば、やはり目指すレベルに見合った設備を備え、使いこなす努力が必要なのではないだろうか。

 「工作機械は大手企業よりも上手に使えるがITは今ひとつ活用できない」というのは単なる思い込みだ。まずは「一点」豪華主義でも、最高のITを手に入れ、これを大企業とは比較にならない高度なレベルに使いこなす。これこそ真に強い中堅企業であり、近い将来には間違いなく大企業へと成長するに違いない。

 逆に、大企業という看板に甘んじて、ITを十分に使いこなせない企業が大企業で居続けることができるほど、今後のビジネス環境は甘くないと筆者は考えている。

 ITは単なる道具である。しかし、これを使いこなすことは、強い中堅企業への変革、および未来の大企業に飛躍するための第一歩に違いない。

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