中堅企業のIT化における最大のボトルネックになっているのは「ユーザー」だ。あるプロジェクトではエンドユーザー育成における切り札を用意した。その名は「SAPレディー」である。
オンラインムック強い中堅企業のIT化シナリオ。
鍋野敬一郎
これまで、第1回、第2回、第3回を通じて、中堅企業のIT化シナリオをテーマにERPを中心にしたソリューションについて説明してきたが、実際に、中堅企業のIT化における最大のボトルネックになっているのは「ユーザー」だ。企業の規模に関係なく、導入を検討する情報システム部門や提案するベンダーが見過ごしやすいのがエンドユーザーのシステムに対する意識である。
ITはあくまでも、ユーザーにとって作業をサポートする道具である。それ以上でも以下でもない。どれほど優れた製品であろうとも、ユーザーは自分が納得しなければ使わない。たとえ「社長プロジェクト」でトップダウン導入したERPだったとしても、ユーザーが納得しなかったために結局は利用されず、負の遺産として財務を圧迫するケースは多々ある。
大手企業で働く人には信じられないかもしれないが、中堅・中小企業の仕事の現場では電子メールもExcelも、インターネットすら全く必要としないケースが今も多くある。むしろ、それがごく当たり前と言っても言い過ぎではないかもしれない。
筆者はかつて化学メーカーに在職しており、農薬の原材料を製剤メーカーに販売し、技術サポートも行うMR(医薬情報担当者)だった。外資系だったこともありIT化への取り組みも早く、20年前に既に電子メールや基幹システムがあったが、実際には当時、顧客とのやり取りの大半は電話とFAXだった。
そして、状況は現在でも大きくは変わっていないようだ。というのは、もともと業務の大半はITがなくてもできてしまうものだった。結果として、こういった企業の「基幹システム」がその名の通りの役割を果たせるかは疑問ということになり、負の遺産扱いされていく。つまり、何を言いたいのかというと「エンドユーザーを巻き込むIT化シナリオとは日常業務にITを組み込むシナリオである」ということだ。これが、中堅企業には必要不可欠なのである。
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