難しく考えず「SAPレディー戦略」を見習うべき?強い中堅企業のIT化シナリオ(3/4 ページ)

» 2006年03月24日 08時00分 公開
[鍋野敬一郎,ITmedia]

エンドユーザーのIT習熟度がカギ

 日本版SOX法の導入は、当初言われていた2008年3月から少なくとも2009年へと1年ほど先送りされるという話が出ている。だが、遅れる分だけ内容はよりしっかりしたものになると考えた方がいい。もし対応できなかった場合に「時間がなかった」という言い訳も通用しづらくなる。

 だが、社内ユーザーのレベル向上がカギという中で、外部のコンサルタントやベンダーが本腰を入れて育成に乗り出すことは実質的に難しい。やはり、あくまでも社内において、ユーザーレベルを向上させるアイデアが求められるのである。

切り札は「SAPレディー」か?

 ここで、エンドユーザーをITプロジェクトにうまく巻き込んだ実例を紹介したい。

 この企業では合併を機会に、11カ所の工場とそれぞれ個別にある購買システムをERPシステムに統合するという大規模なプロジェクトを実施していた。システムをスムーズに稼働させるために、エンドユーザー啓蒙活動は最重要課題だった。

 そこで「秘策」が披露されたのである。同社は、ERP導入を全社プロジェクトと位置付けていた。そして、全国各地の工場が情報を共有するために社内広報誌に毎月特集を組んでいた。その目玉が、エンドユーザー向けトレーニングのトレーナーとして組織された「SAPレディー」だったのだ。

 社内広報誌はSAPレディーの活動を記事として紹介した。IT部門と導入ベンダーの女性で編成されたこの組織は、全国各地の工場を訪問し、一人一人のエンドユーザーにシステムの操作を教えていったという。

 「女性だから」人気が出たのか、今が本当に「そんな時代」なのかは定かではないが、現場の人気は上々だった。新システムに対する認知度もアップし、意識も飛躍的に向上した。

 エンドユーザーがトレーニングの重要性を認識したとしても、実際にはここまで達成できたプロジェクトは多くない。コストや効率を考えると、キーユーザーだけ本社に呼んで、集中トレーニングで対処するケースが圧倒的に多いのが現状だ。

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