競合ブラウザからシェア奪還に動くInternet Explorer 7の実力は?(1/3 ページ)

新しいInternet Explorerは2001年以来となる大幅なセキュリティ強化と機能改善によって、競合ブラウザと十分戦えるようになった。IE7は競合ブラウザに侵食されたIEの市場シェアを奪い返す切り札になるか?

» 2006年04月04日 07時00分 公開
[Matt Rosoff,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版

 Microsoftが提供するWebブラウザの新バージョン、Internet Explorer 7(IE7)には、2001年以来となる大幅なセキュリティ強化が施され、タブブラウジングやRSSサポートなど、さまざまなエンドユーザー向けの新機能が追加された。2006年2月にIE7のパブリックβ版をリリースしたMicrosoftは、ブラウザ市場で急速に追い上げるFirefoxやOperaといった競合製品に新バージョンで反転攻勢をかけ、それらのブラウザが侵食したIEの市場シェアをいくらかでも奪い返すことができるかもしれない。ただし、セキュリティ関連の変更は、一部のWebサイトやWebアプリケーションで機能不全を引き起こす可能性がある。ベンダーや企業のIT部門は、Microsoftが用意するアプリケーション互換性ツールキットで新しいブラウザをテストしなければならない。

なぜIEをアップデートするのか?

 Microsoftは2004年7月まで、IEに関してスタンドアロンの新バージョンをリリースする計画はないとしてきた。そのためユーザーがIE 6の最も安全なバージョンを入手するには、XP SP2にアップグレードするほかなかった。またIEの次期バージョンについても、ユーザーはVistaを購入する必要がある、と同社は説明してきた。こうした強気の方針は、主にビジネス上の意思決定であった。というのも、MicrosoftはIEから利益を得ておらず、またこれまで特にアップデートしなくてもブラウザ市場を独占してきたためだ。

 同社は2005年、そうした方針を変更して、Windows VistaとWindows XP SP2向けにIE7をリリースすると発表した。その決定の背景には市場競争の激化、特に非営利団体のMozilla Foundationが開発したオープンソース・ブラウザ、Firefoxの台頭があった。その年、Firefoxのダウンロード数は2004年11月からの累計で1億を超え、急速にシェアを伸ばしていることは明らかだった。調査会社によって数字は異なるが、Firefoxの市場シェアはおおよそ10パーセント前後、IEのシェアは90パーセントを切った。

 Firefoxへの興味の高まりは、主にブラウザとしての安全性が高いという認識に起因している。例えば、MozillaはMicrosoftのActive Xをサポートしていない。この技術を利用すればインタラクティブなWebページを構築できるが、一方で好ましからざるソフトウェア(ユーザーの画面に広告を表示するソフトウェアなど)や悪意のソフトウェア(ユーザーのデータを盗むキーロギングプログラムなど)がユーザーに無断で、あるいは認識されずにインストールされる危険性がある。IEはActiveXをサポートする唯一のブラウザだが、ActiveXが嫌なら他のブラウザを利用することも可能だ。Firefoxがシェアを伸ばしているのは、多くのユーザーがActiveXコントロールがもたらすセキュリティの脆弱性に気づきつつあるからにほかならない。

 加えて、FirefoxやOpera、Safari(Macintosh用のみ)などのブラウザは、タブブラウジング(1つのウインドウ内にタブ形式で複数のWebページを表示できる機能)など、IEに欠けるインタフェース機能を提供するほか、Web表示標準のサポートやお気に入りのWebサイトの管理機能などでも優位性を持っている。

 ブラウザ市場を独占するIEによって、MicrosoftはWebブラウジングに関する事実上の標準をコントロールしている。もしIEが停滞すれば、標準に対する支配力は、PCデスクトップの重要性を削ぐ技術に積極的に取り組む他社に奪われるだろう。また悪意のあるソフトウェアの増殖は、ユーザーのインターネット離れやコンピュータ離れを引き起しかねない。Microsoftはそうした脅威を取り除くために、アンチスパイウェア会社(Giant Software)を買収して、その技術を無料で提供(Windows Defender)するなどの動きを活発化させている。そうした中で、悪意のあるソフトウェアが侵入するセキュリティホールを閉じようとすることは、当然、次の論理的ステップとなる。

セキュリティにこだわった強化

 Microsoftは一部の機能を無効にしたり、マニュアルで有効化するようユーザーに強制することで、IE7のセキュリティを現行バージョンより強化した。それはMicrosoftのTrustworthy Computing(信頼できるコンピューティング)における"出荷時設定時のセキュリティの確保"に基づく手法だ。これらのステップは歓迎されるものではあるが、それでもユーザーは、分かりにくい名前や記号で、誰が作成したものかも判然としないActiveXコントロールを実行するかどうかの判断など、その意味するところを必ずしも理解していない行動を取るように促されることがある。

 また、こうしたセキュリティ関連の変更は、既存のWebサイトやWebアプリケーションのユーザーエクスペリエンスを壊したり、退化させることがあり、Web開発者がその対応に追われる可能性もある。詳細は、Internet Explorer 7のセキュリティ強化が生み出す互換性問題を参照。

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