Vistaに浮上するさらなる遅延の可能性、Officeは順調?

WindowsおよびOfficeの次期バージョンは、ボリュームライセンスユーザー向けには2006年後半にリリースされるが、一般向けリリースは2007年に持ち越された。Officeは新スケジュールに沿ったリリースを期待できそうだが、Vistaについてはさらなる遅延も予想される。

» 2006年04月13日 07時00分 公開
[Rob Helm,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版

 WindowsおよびOfficeの次期バージョンは、ボリュームライセンスユーザー向けには2006年第4四半期にリリースされるが、一般向けリリースは2007年に持ち越された。このニュースは、次期クライアントOSのWindows Vistaのリリースが、2006年末のホリデーシーズンにおけるコンシューマー向けPCの売上を押し上げるものと期待していたPCメーカーやリセラーを落胆させた。また、VistaとOfficeのリリースの延期は、各製品のアップグレード権を保有していた企業ユーザーにも影響を与える可能性がある。

リリース予定を固持する理由がない

 Microsoftの発表によると、Windows Vistaのリリース予定はボリュームライセンスユーザー向けには2006年11月、OEM向けには2007年1月となった。この発表の前まで同社は2006年中のVistaのリリースを目指しており、Windows XPの最後のマイナーリリース(Windows XP SP2)から2年、メジャーリリース(2001年10月)からは約5年を経てのリリースとなる予定であった。

 同社は、Windows Vistaのリリース予定を延期した理由を明かしていない。ただし、基本機能が完成した(feature complete)の最初のCTP(コミュニティ技術プレビュー)版が公開されたのは2006年2月である。2006年中のリリースとなると、出荷までにテストに当てられる時間はほとんど残されていなかったことになる。またVistaの新機能の中には、新しいグラフィックサブシステムのAeroシェルやセキュリティ機能のUser Account Controlなど、ハードウェアおよびアプリケーションの大規模な互換性テストを要するものが含まれていることも大きいだろう。

 例年12月はホリデーギフトシーズンのためコンシューマーのPC購買が活発になるが、Vistaのリリースの延期でOEMはこの格好の商機を見送らざるを得なくなった。PC購入予定者の多くは、VistaのプリインストールPCが発売される1月まで購入を控えることが予想されるからだ。OEMにとってさらに都合の悪い事態としては、コンシューマーがゲームコンソールや高精細TV、ポータブル音楽プレーヤーなどのハイテク機器に予算を使ってしまい、次のホリデーシーズンまでPCの新規購入を見送る可能性も考えられる。

 また、企業ユーザーへの影響も予想される。具体的には、2003年10月以前にWindowsクライアント用のソフトウェアアシュアランス(SA)またはエンタープライズアグリーメント(EA)を購入しているユーザーは、契約を更新しなければVistaへのアップグレードはできない。ただしほとんどの企業は、SAまたはEAを購入してアップグレード権を確保するのではなく、新規PCの購入と合わせてWindowsライセンスを購入するため、大きな問題にはならないかもしれない。むしろ、Windows Vistaと同じコードベースの次期Windows ServerおよびVistaと開発およびテストリソースが同じWindows XP SP3のリリースが遅れる可能性の方が問題だろう。

 Microsoft自体は、2006年のホリデーシーズンを逃したことで、.NET Frameworkや同社の検索テクノロジーなど、Vistaに実装される戦略的テクノロジーの普及に弾みをつける機会を失ったことになる。そして、この逸機が確実になった現在、さらにVistaのリリースが延期される可能性が浮上してきた。2007年前半にはこのホリデーシーズンのようなリリース予定を固持すべき"節目"がないうえ、Vistaが安定した状態になるまでは依然として時間をかけたテストが必要であるからだ。

Officeは予定どおりのリリースに?

 また、Office System製品の次期バージョンについても、ボリュームライセンスユーザー向けには2006年10月、一般およびOEM向けには2007年1月にリリースされる予定となった。このOfficeの次期アップデートでは、Office 2007スイートのほか、ProjectおよびProject Server、SharePoint Server(SharePoint Portal Serverの後継製品)、SharePoint Designer(FrontPageベースの派生製品)、Visioの各製品の2007バージョンが提供される予定だ。

 Vistaと同様に、2003年10月より前に有効期間が3年のSAまたはEAを購入している企業ユーザーは、契約を更新しなければOffice 2007への無償アップグレードはできない。Windowsに比べてOffice用のSAまたはEAを購入しているユーザーは多いが、Office 2003のリリースは2003年10月であるため、OfficeのSAまたはEA保持ユーザーにはアップグレード権を行使できる機会がより短期間で訪れることになる。

 Office 2007の一般向けのリリースが延期された理由は、おそらくVistaとマーケティングのタイミングを合わせるためだろう。また、Officeの新しいリリース予定は、Exchangeの次期バージョン(コード名:Exchange 12)のリリース予定ともかみ合っている。Exchange 12は、2006年末または2007年初頭に製造工程に向けてリリースされる予定だ。Officeについてもさらなるリリース遅延の可能性はあるが、Windows Vistaほどではない。Officeクライアント製品は既に基本機能が完成(feature complete)しており、2005年11月時点で1000を超えるユーザーを動員したβテストが実施されている。Officeのサーバー製品については、大規模なβテストはまだ実施されていないが、現在限定ユーザーを対象とした(クローズド)βテストが実施されている。以上の状況から判断して、Windows Vistaに比べて、Office 2007製品が現在の予定どおりにリリースされる可能性は高い。

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