テクニカルライターがFOSSを使わない理由(1/2 ページ)

テクニカルライターは、フリー/オープンソースソフトウェアの利用に前向きなグループだと思っていた。しかし、実際には、仕事でFOSSを利用しているのはほんの一握りだった。

» 2006年04月18日 14時38分 公開
[Bruce-Byfield,japan.linux.com]
SourceForge.JP Magazine

 テクニカルライターは、FOSS(Free and Open Source Software)の利用に対して2番目に前向きなグループだと思っていた。コンピュータの上級ユーザーであり、日々開発者と接することでFOSSへの関心が高まっているはずだと考えたのだ。ところが、数カ月前にTechwr-lというテクニカルライターのメーリングリストでFOSSについて議論し、自分が間違っていたことに気づいた。仕事でFOSSを利用しているのはほんの一握りだった。

 そのときの議論に感化され、FOSSを使ってみようという人も少しはいた。しかし、大多数は控えめな関心しか示さなかった。FOSSコミュニティーでは十分なサポートや品質が得られないと聞いたことがある、などと俗説を信じている人までいた。けれども、大半の人々には、実用性、慣れ親しんだものへの執着、ダブルスタンダードといった要因が混在していたようだ。このことから、FOSSコミュニティーと、その恩恵をすぐに享受できるはずの人々の多くには依然として大きな隔たりがあることが分かった。

 テクニカルライターたちのこうした反応は、このメーリングリストに古くから参加しているメンバーの3つの意見によく現れている。最初の意見は、長い間テクニカルライターを続けているGene Kim-Eng氏のものだ。Kim-Eng氏はFOSSを使いたがらない理由を、エンドユーザーのニーズではなくプログラマーの興味で機能を加えたり、あまりに多くを詰め込もうとし過ぎる傾向が感じられるからだ、と説明した。独占的ソフトウェアにも同じ傾向があり、「明確なビジョンを持った人物が彼らに何をすべきかを伝える」必要がある、というのが彼の考えだ。FOSSや独占的ソフトウェアよりも、彼はシェアウェアを好んでいる。「シェアウェアの場合、1つのことを手際よく行うものを作りたい、というある人の願いと決断から生まれたプログラムが多い」からだそうだ。

 2番目の意見を述べてくれたのは、ニューヨークのシニアテクニカルライター、ジョン・ポサダ氏だ。ポサダ氏は、FOSSのインストールが、思い描いていたような簡単で無駄のないものではなく、あまりに複雑過ぎた、と不満を漏らしている。彼はGIMP for Windowsをその例に挙げた。GIMPのメインサイトから別のサイトへ行ってFAQに目を通し、ダウンロード後にGIMP for WindowsとGTK+2を両方ともインストールしなければならなかったという。また、インストールがすべて終わるころには、当初の目的をすっかり忘れてしまいそうだった、とひょうきんに語った。この経験から彼が導いた結論は「オープンソースは開発者のためのものだ」というものだ。「わたしはただ、画像のサイズを変えてTIFからPNGにフォーマット変換したかっただけなのだ」

 3番目の意見は、ニューイングランドのベテラン編集者、ボニー・グラナト氏が語ったものだ。彼女がクライアントからOpenOffice.org(OOo)を使うように頼まれた当初は、とても乗り気だったという。しかし、わたしが話を聞いたときには、OOoのWriterの機能性はMicrosoft Wordよりも劣っていると決めつけ、「ちょっとした違いが厄介なのよ」と語った。ほぼ同じ意見がシュー・ギャラガー氏からも出ていた。ライター向けにオブジェクト指向プログラミングのセミナーをしている人物だ。「Wordで使っている機能の一部がWriterにはない」とギャラガー氏は言う。ポサダ氏もあいまいな記憶をたどって、OpenOffice.orgを試したときのことを同じように述べている。「Writerではやりたいことができなかった。それどころかコンピュータが不安定になってしまった。Writerのせいじゃないか、とわたしは思っている。詳しいことは覚えていないがね」

 これらすべての意見について偽りを暴くのは簡単だ。誤解、前後関係の欠如、知識の不足に基づいた発言が数多くある。

 しかし、こうした意見に関してもっと興味深いのは、彼らの採った態度だ。FOSSを使い始めるに当たって、誰もフリーソフトウェアまたはオープンソースの理念に対して関心を示していない。また、大半の人々はその内容を理解していない。質問を促されると、最も基本的な質問を彼らは投げかけてきた。無報酬で取り組んで開発者にはいったい何の得があるのか、といったものだ。受け売りの知識に基づいてFOSSの本当の姿を暴こうとする人も若干いた。FOSSの理念に関心を示さないどころか、実際に何が得られるかという結果にしか興味がない、と主張する者までいた。理念の役割についてのわたしの質問に対するポサダ氏の反応が彼らの多くの気持ちを代弁している。「理念など知ったことではない。わたしの興味は、文書を早く書き上げることにしかないのだ」

       1|2 次のページへ

Copyright © 2010 OSDN Corporation, All Rights Reserved.

注目のテーマ