これまで、OpenOffice.orgに関する質問と回答情報は掲示板やメーリングリストなどに分散していた。これらの情報を集約するためのサイトである。Pukiwikiを利用してサイトを構築しているが、カジュアルなユーザーにとっては、Wikiのような柔軟性の高いシステムはハードルが高いのではないか? という意見があったため、一般的な掲示板風に見えるよう工夫をしている。デザインは、Mira AK氏が行った。
このような形態で欠かせないのが、質問に対応する人たちだ。単に、質問に回答するだけではなく、不明瞭な質問から状況を明確したり、問題を再現させるといった地道な作業が必要になる。現在、鎌滝雅久氏をはじめとする有志がこの作業に当たっている。筆者は、1日30分ほどをこのために当てている。
このようなサイトが整備されることで、多くのユーザーがOpenOffice.orgを安心して利用できる環境が整えられるだろう。特に、企業などでOpenOffice.orgを導入する際に、有償サポートサービスに依存することなく、OpenOffice.orgの利用ノウハウを得られるだろう。読者の中でもOpenOffice.orgを使っていて分からない操作があれば、気軽にアクセスしてみてほしい。
その場合、いきなり質問を書き込むのではなく、検索したり、「本当によくある質問」を読んでみてほしい。かなりの確率で知りたい情報が見つかると思う。それほど蓄積されてきたことも意味する。
また、質問を書き込んで自らの環境で回答が得られた場合、その結果をフィードバックしてほしい。そうすることで、後から同じような疑問を持った人にも参考になるからだ。回答する人たちの励みにもなる。
オープンソースプロジェクトというと、あなたはどのような集まりを想像するだろうか。凄腕プログラマの開発者集団? インターネットを介して不具合情報をフィードバックする活発なユーザー? ソフトウェアの開発プロジェクトと考えた場合、前者のイメージはほぼ正しいと思う。昨今は、ドキュメントを整備したり、各言語に翻訳したり、マーケティングを担う人たちが、これに含まれる。そうとはいえ、このようなスタイルは大規模なソフトウェア開発であれば、ほぼ同じであろう。
オープンソースプロジェクトで重要なことの一つは、開発作業の周りにいる多くの貢献者だ。プログラムのテストとデバッグは、開発プロセスの重要な位置を占めており、貢献者によるフィードバックが欠かせないものだ。LinuxカーネルやApacheといった技術志向のソフトウェアでは、ユーザー自身がエンジニアである場合が多い。そのため、的確なフィードバックが寄せられることで、品質向上が期待できるのだ。
OpenOffice.orgのコミュニティーは、比較的ユーザーが多い場となっている。そのため、上記のような人材が必ずしも多いとは言えない。ワープロや表計算を使いたいというカジュアルなパソコンユーザーが体勢を占めている。このため、不具合を見つけたとしても、いきなりバグトラックシステムに英語でレポートするのは敷居の高い作業になっている。この点は、今後のコミュニティー形成の大きな課題になっている。
開発への貢献というとハードルが高いが、OpenOffice.orgを取り巻く「環境を良くしていく」という気持ちであればどうだろうか。誰でも比較的参加しやすくなると筆者は思う。このように書いている筆者自身も、ソースコードはまったくと言ってよいほど理解ができず、英語もほとんど解釈していない。しかし、日本語のドキュメントを書いたり、普及活動を手伝うことができるのだ。
このような背景から、筆者は前述のようなFAQ情報を集約することはオープンソースコミュニティーの大きな課題だと考えている。
現在のところ、質問と回答を集約する場所に過ぎないが、情報を集約することで効率よくユーザーが利用できたり、バグフィクスへの貢献も可能となるはずだ。
エンドユーザーの声を開発プロジェクトに届けることは大切なことだと考えている。特に、オフィススイートというソフトウェアの特性上、OpenOffice.orgにはこの課題が大きく占めていると言えるだろう。
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