新会社法のメッセージは「SEよ大志を抱け」?顧客満足度ナンバーワンSEの条件〜新人編(3/3 ページ)

» 2006年05月01日 00時50分 公開
[谷川耕一,ITmedia]
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SEの将来のために会社法を理解する

 なんだか堅苦しい話になってしまったが、ここで視点を変えて、SEとしての将来の展望の面から会社法を理解してみたい。

 SEの多くは企業に所属するサラリーマンという立場だろう。5年後、10年後に会社の中でどのようなポジションにあり、どのような仕事をしたいかなど、新人の段階ではまだはっきりしないという人も多いはずだ。

 時代の潮流にかかわらず、将来展望の1つとして「独立」という選択肢がある。技術力を磨いてフリーランスのプログラマーやコンサルタントになるという道もあるし、技術者としてやりたいことをするために起業するという道もある。新会社法では、後者をサポートする新たな制度が多数盛り込まれていることに注目しておきたい。

 具体的には、株式会社の最低資本金制度の廃止、いわゆる一円起業が正式に認められたことがその1つとして挙げられる。さらに、3人以上の取締役を選任して取締役会を設置しなければならないという制限も、監査役設置の制限もなくなった。これで起業を思い立ったら、会社登記費用さえあればたった1人でもすぐに会社を会社を興せるのだ。

日本版LLCにも注目

 また、もう1つチェックしてほしいのが、新設された合同会社(日本版LLC:Limited Liability Company)だ。合同会社は、従来の有限会社よりも柔軟な構造で社員の有限責任(出資者が出資額までしか事業上の責任を負わない)が認められている。その点は株式会社と同じだが、会社そのものには「組合」的な規律が適用されるという組織だ。つまり、有限責任の恩恵を受けながら、運営形態としては合名会社や合資会社のように、公序良俗や法律に違反しない限り役員の権利や利益配分などを比較的自由に定めることができる。これは、特許技術などを利用して、多少冒険的な要素のある事業を興したいとか、ハイリスク・ハイリターンを目指したいといった企業にはかなり有効な組織形態だ。

 新会社法では、会社の設立も容易になっている。最低資本金制度の廃止はもちろんだが、資本金の払込金保管証明制度も廃止された。これまでは、資本金をいったん銀行に振り込んで保管証明を発行してもらう必要があったが、実績もこれといった取引もない個人にとって引き受け金融機関を見つけるのは非常に難しかったため、これは明るい知らせと言っていい。今後は、銀行の残高証明だけあれば登記手続きが可能になる。

 また、新会社法では類似商号の制限も緩和された。これまでは同一地域内で同じ商号で同様の業務をする会社の登記は制限されていたが、今後は同一住所で同一商号の会社の登記ができないというように緩和されている。とはいうものの、商標の問題があるので、むやみに会社名を付けられるかというとそうではない。この辺は注意が必要だ。

 このように、以前より会社を作ることはかなり容易になった。だが、会社運営が楽になったわけではない。むしろ企業に求められる社会的責任はより重くなっている。また、どの市場においても競争は厳しい。とくにIT業界は変化も激しく、オフショア開発に代表されるようにグローバル化への対応も求められる。先見性をもったきちんとした計画と、なによりも基礎となり武器となる「技術力」を、いまのうちに十分に養っておく必要がある。

 SEにとって直接は関係がないと思われる新会社法だが、見方を変えればさまざまな面で技術者の仕事や考え方に影響を与えそうだ。優秀なシステムエンジニアになるためには、プログラミングやシステムの知識というベーシックな部分はもちろんだが、今現在の社会の動きにも十分にアンテナを張っておくべきである。会社法はかつての商法などよりも容易に読めるようになっているので、これを期に一度目を通してみるのもいいかもしれない。

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