SAPPHIREオーランド開幕、「SAP ESAで次の潮流をつくろう」とアポテカ社長SAPPHIRE '06 Orlando Report

「待ったなしだ。今からスタートしよう」── 営業を統括するアポテカ社長がその大半の時間を割いて紹介し、SAP ESAが単なるコンセプトではなく、今すぐ使えるソリューションであることを印象付けた。

» 2006年05月17日 13時06分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 全米有数のリゾート、フロリダ州オーランドで5月16日夕方、「SAPPHIRE '06 Orlando」が開幕した。あいにくの雨となったが、会場となったオレンジカウンティ・コンベンション・センターのエントランスには、OracleやSalesforce.comの広告を屋根に載せたタクシーが乱入。まるでどこかの国会の牛歩戦術のようにゆっくりと車を進め、「示威行為」を繰り返した。

 Oracleは2004年末から、PeopleSoft、小売り業向けアプリケーションのRetek、そしてCRMのSiebel Systemsと矢継ぎ早の大型買収でその規模を拡大してきた。いったんはSAPと合併合意したRetekに対してはTOB(公開買い付け)を仕掛けて一歩も譲らなかった。

 しかし、44才という若いビル・マクダーモット社長兼CEOが率いるSAPアメリカは、北米市場で着実にシェアと売り上げを伸ばしている。彼は、2002年にSAPに入社する以前は、Siebel Systemsのセールスを統括する執行副社長でもあった。

Gartnerの社長やSiebelの執行副社長として手腕を振るい2002年にSAPアメリカに入社したマクダーモット氏

 今年のSAPPIREは、そんなSAPアメリカの勢いも反映し、米国のユーザー会であるASUG(Americas' SAP Users' Group)の年次総会と初めて同時開催し、その参加者も1万5000人に膨れ上がっている。

 オープニングのキーノートに登場したマクダーモット氏は、「今やイノベーションを実現している企業は、そのビジネスを大きく成長させている。こうして1週間、同じ場所で過ごすのは、ベストプラクティスや新しいアイデアを共有し、ITを戦略的な武器として活用してもらうのが狙いだ」と話した。

 企業にとって戦略を描くことは簡単だが、その実行は難しく、それが勝ち組と負け組を分ける。しかし、残念ながら、今日のITシステムは俊敏に変化に対応することを前提につくられていない。SAPは2003年、SAP ESA(Enterprise Services Architecture)構想とSAP NetWeaverを発表し、以来、ベストプラクティスの迅速な導入と、さらなるイノベーションの触媒として顧客らに売り込んできた。

 マクダーモット氏は、「多くの産業がそうだったように、ソフトウェア産業も成熟に向かう中で標準化が進んでいる。SAPが提供するイノベーションと成長のためのプラットフォーム上には、すでにエコシステムが構築されている」とし、SAP ESAでイノベーションを実現し、好調な業績を続けるThe Home Depotの執行副社長兼CIO、ボブ・デローデス氏を壇上に引き上げた。The Home Depotは、5月初めに発表された「Duet」の早期導入企業でもある。

 Duetは、Mendocinoのコードネームで開発が進められてきた、Microsoft OfficeとmySAP ERPを連携させるツール。ユーザーは使い慣れたOfficeからERPの機能、例えば、予算管理、スケジュール管理、休暇届などの機能にアクセスできるようになる。かつては合併まで検討したMicrosoftとSAPが共同で開発した製品で、今回のSAPPHIREでも大々的にお披露目されている。

 デローデス氏は、「われわれはエンタープライズアプリケーションと個人の生産性を高めるOfficeスイートのどちらにも大きな投資を行ってきており、Duetによって2つのシステムからより多くの価値を引き出したいと考えている」と話した。

The Home DepotのデローデスCIO(左)は昨年に続いての登場となった

すぐに使える革新と成長のためのプラットフォーム

 ホスト役を務めるSAPアメリカのマクダーモット氏に続いてステージに登場したSAP AGのレオ・アポテカ氏もイノベーションと成長のためのプラットフォームを売り込んだ。実のところ、昨年までのSAPPHIREでは、コンセプトをテクノロジー担当のシャイ・アガシ社長が紹介してきたのだが、今年は営業を統括するアポテカ社長がその大半の時間を割いて言及しているところが大きく異なる。

 「あなたの競合はすでに準備を進めている。待ったなしだ。今からスタートしよう」とアポテカ氏は話し、ESAがすぐに使えるソリューションへと進化していることを印象付けている。

グローバルの営業からコンサルティング、マーケティング、オペレーションまで統括するアポテカ社長

 ESAによってmySAP ERPは、より低コストで迅速にベストプラクティスを導入しつつ、人をエンパワーし、さらにxAppsによってビジネスプロセスを革新したり、必要に応じてビジネスプロセス自体をアウトソース(BPO)することができる、「新しい時代のERP」に昇華しようとしている。ESAに基づいて開発されたDuetやSAP Analyticsは使い勝手を改善したり、インサイトによって生産性を高める良い例であり、すでに現実に導入できるソリューションとなっている。

 また、BPOでも給与計算における世界最大のアウトソーサーであるAutomatic Data Processing(ADP)がmySAP HCM、CRMおよびNetWeaverを活用した人事・給与サービス「ADP Global View」を提供しており、すでにCisco Systems、EMC、Microsoft、NCRなど、50社50万人を顧客として獲得しているという。

給与計算における世界最大のアウトソーサー、ADPを率いるバトラー社長

 アポテカ氏がステージに引き上げたADPのゲイリー・バトラー社長兼COOは、世界各国の人事・給与に精通した同社の専門知識と、マルチ言語とマルチ通貨をサポートするSAPのグローバルなプラットフォームが結実したGlobal Viewの強みを強調した。最大のユーザーでもあるMicrosoftは、DuetによってOfficeから人事・給与の機能にアクセスできるようにし、2年以内に海外も含め、95%以上の従業員の人事・給与をアウトソースするという。

 アポテカ氏は、「mySAP ERPは、ESAへの足掛かりとなるもの。ベストプラクティスを低コストで迅速に導入でき、xAppsによって競合他社との差別化も図ることができる。みなさんと一緒になって次の潮流をつくっていこう」と話し、SAP ESAへの移行を促した。

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