「次の5年を勝ち抜くにはビジネスプロセスの革新が不可欠」とSAPのカガーマンCEOSAPPHIRE '05 Boston Report(1/2 ページ)

SAPPHIRE '05 Bostonは2日目を迎え、カガーマンCEOが登場した。昨年の約束どおり、2007年にはBusiness Process PlatformですべてのSAPアプリケーションが出そろい、ESAを完成させるとした。

» 2005年05月19日 11時41分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 「私は米国経済の将来、IT業界の将来、SAPの将来、そしてわれわれと共にビジネスを変革しようとしている顧客の将来を楽観視している」──SAPのヘニング・カガーマン会長兼CEOはボストンコンベンションセンターのキーノート会場に詰め掛けた顧客やパートナーらにそう切り出した。

1998年から取締役会の共同会長を務めてきたが昨年から単独の会長となっているカガーマンCEO

 米国時間の5月18日、マサチューセッツ州ボストンで開催されている「SAPPHIRE '05 Boston」は2日目を迎え、午前のキーノートにSAPを率いるカガーマンCEOが登場した。カガーマン氏は、「2010年の企業」をテーマに取り上げ、企業が次の5年を勝ち抜くためにはイノベーション、特にビジネスプロセスのイノベーションが不可欠だとした。

 これまで企業は、生産性の改善、そして優れた製品の開発・製造によって差別化を図ってきた。しかし、「次の5年はビジネスプロセスのイノベーションが不可欠だ」とカガーマン氏は指摘する。製品やサービスが陳腐化するスピードはますます加速しており、企業は新しい製品やサービスを迅速に提供するためにビジネスプロセスを絶えず変えていかなければならないからだ。

 そのためにはITシステムが柔軟にワークフローを変更できるようになっていなければならないし、それは社員だけでなく、パートナーの従業員も含めたワークフローに関わる全員がうまく協調して働けるようになっていなければならない。

 「従来型の融通の利かない硬直化したビジネスプロセスではなく、ビジネスプロセスを容易に組み替えられる柔軟なアーキテクチャーが必要なのだ」(カガーマン氏)

NetWeaverは成長を可能にする基盤

 SAPは2003年、SOA(サービス指向アーキテクチャー)をエンタープライズレベルに引き上げる「Enterprise Services Architecture」(ESA)を発表した。まだ、経済の先行きに不透明感があり、企業はIT支出を厳しく抑制していたころだった。

 しかし、「成長への投資を行わない企業に成功はない」と考えるカガーマン氏は、製品開発に多額の投資を行い、2004年には、「イノベーションによる成長」を掲げて「SAP NetWeaver」を市場に投入した。

 J2EEをはじめとする標準技術をベースとするNetWeaverは、「mySAP Business Suite」ソリューションや「SAP xApps」コンポジットアプリケーションだけでなく、パートナーソリューションや顧客のカスタムアプリケーションのための技術的な基盤となるプラットフォーム。顧客は、SAPと非SAPのシステムを単一のアーキテクチャーに統合することで、既存の投資からさらなる価値を引き出すことができるほか、迅速にビジネスプロセスを組み替えることができる。

 「NetWeaverは単にTCOを引き下げるだけではなく、成長のためのイノベーションを可能にするプラットフォームだ」(カガーマンCEO)

 昨年、SAPはNetWeaverに対応した最初の製品として「mySAP ERP 2004年版」を出荷した。2004年版のmySAP ERPは、開発者から見れば、NetWeaverを介してアクセスできるサービスに生まれ変わっている。さまざまなサービスを組み合わせることによって新しいビジネスプロセスにも柔軟に対応でき、いわば次世代エンタープライズアプリケーションのショーケースでもある。年内にはCRMをはじめ、mySAP Business SuiteのすべてがNetWeaverに対応する予定だ。

人をエンパワー

 しかし、ビジネスプロセスが柔軟に組み替えられるようになっても、人は一夜にして変わるわけではない。ビジネスを支えているのは人だ。SAPは4月下旬、コペンハーゲンのSAPPHIREで、イベントに応じて脈絡のある意思決定が迅速に行える分析アプリケーション「SAP Analytics」を発表したばかり。ほかのビジネスインテリジェンス製品とは異なり、25の業界ごとのニーズに合わせ、100種類以上を開発、アドオン製品としてソリューションに組み込もうとしている。

 「人と人のコラボレーションがカギを握るし、たまにしかシステムを使わないユーザーを想定した“インスタント”ラーニングの仕組みも大切になる」とカガーマン氏は続ける。

 その意味では、やはりコペンハーゲンのSAPPHIREで発表された「Mendocino」(コードネーム)は欠かせない製品となる。使い慣れたOutlookからSAPのビジネスアプリケーション、例えば、SAP Analyticsの売り上げレポートなどにアクセスできるからだ。

使い慣れたOutlookからSAP Analyticsの売り上げレポートにアクセスできる。この画面では中央下のペインに表示されている
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