Javaのオープンソース化は互換性問題というリスクを招く――Sun幹部が警告(2/2 ページ)

» 2006年05月23日 09時45分 公開
[Peter Galli,eWEEK]
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 SunはJava新しいライセンス方式「DLJ」(Distribution License for Java)も発表した。これは、従来のJavaバイナリラインセンスをリプレースするもの。従来のバイナリライセンスには、GNU Linuxディストリビューションでは受け入れられない規定が幾つか含まれていた。例えば、Java製品にJDKまたはJRE(Java Runtime Environment)を含めなければならないこと、Javaの一部分を置き換えることを目的とした技術を含めてはならないこと、さらにそのソフトウェアをダウンロードあるいは使用したユーザーが責任を負わされることなどである。

 「これらの規定はいずれも、GNU Linuxディストリビューション、特にDebianにとって受け入れ難い。その結果、GNU Linux上のJava SEに適用されるパッケージ管理方式がプラットフォームと一緒に改善されなかったため、GNU LinuxにJavaをインストールするために提供されているパッケージはあまり良くなかった」とフィプス氏は話す。

 これは意図してそうなったわけではなく、商用ライセンシーにフォーカスが当てられていたからだという。「Java市場に関して人々に理解してもらいたいのは、互換性とは、どの企業も市場を不当に利用できないようにすることを意味するということだ」(フィプス氏)

 「つまりSunが有利になるようにコントロールするのではなく、だれも有利になることがないようにコントロールするということだ。われわれがJavaを利用するのは良くないといつも言われるが、これは矛盾した話だ」(同氏)

 SunがこれまでJavaのオープンソース化に抵抗してきた理由の1つに、Javaをオープンにすれば、MicrosoftやIBMなどの企業がマーケティング力によってJavaを支配することを許す可能性があるからだ。

 Sunの元ソフトウェア担当執行副社長、ジョン・ロイアコノ氏は、「これは両刃の剣だ。利便性が高まるという理由で人々に多くの自由を与えれば、互換性のルールに従わない人が多くなり、分裂が生まれる」と話している。

 しかしSunでソフトウェアマーケティングを担当するピーター・ユーランダー執行副社長は、JavaOneでeWEEKの取材に答え、「販売力と資金力で競合企業に負かされるのではないかという恐れは、もはや問題ではない。人々は革新企業や技術を牽引する企業と協力したいと思うようになったからだ」と語っていた。

 フィプス氏によると、Javaライセンスを作成した当初の狙いは、商用製品ベンダーがコミュニティーに対して不公正なやり方でJavaを利用するのを防ぐことにあったという。ライセンスにはそういったことを防ぐための条項が含まれていたが、これはDebianなどの非商用ディストリビューションにJavaを含めることができないという残念な副次的影響をもたらした。

 しかしフィプス氏は、「DLJはオープンソースライセンスではない。有償リポジトリに含める場合でも受け入れられるライセンスになったのだ」とも述べている。

 Sunは、ライセンス問題をめぐってコミュニティーと直接かかわってきた。SunでJavaを担当する法務、マーケティング、技術の各チームは、Debian、Ubuntu、Gentooコミュニティーと共同でライセンスの問題点を洗い出すとともに、受け入れ可能な新しいライセンスを策定する作業を進めてきたという。

 SunのJava技術チームは、コミュニティーが独自のパッケージを構築するのに必要なパーツを作成する作業も行った。また、「JDK-distros」と呼ばれるコミュニティーも設立された。JDK-distrosでは、GNU LinuxやOpenSolaris OSに必要なすべてのコンポーネントが提供される。

 「スクリプティングとパッケージングに必要なすべてのパーツがMITライセンスの下で提供され、これはGPLやCDDLなどほかの各種ライセンス形態と矛盾しない」とフィプス氏は話す。

 これは、Sun Java 5をほかのコンポーネントと同じようにUbuntu、Debian、Gentooにインストールすることができることを意味する。また、Java SEはNetBeansなどのパッケージに必須となっているため、100% Pure Javaに依存するパッケージ用としてGNU Linuxが有力なプラットフォームとなったことも意味する、とフィプス氏は話す。

 同氏によると、「GNU LinuxおよびOpenSolaris上での100% Pure Javaの成功を妨げる不幸な障害」が取り除かれたのは、非常に重要なことだという。

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