Javaのオープンソース化は互換性問題というリスクを招く――Sun幹部が警告(1/2 ページ)

Sun Microsystemsのオープンソース責任者、サイモン・フィプス氏は「Javaをオープンソース化することと、Javaの互換性を維持することの間には本来的な断絶はない」と述べる。

» 2006年05月23日 09時45分 公開
[Peter Galli,eWEEK]
eWEEK

 Sunの幹部によると、Javaをオープンソース化することと、同技術の互換性を維持することの間には本来的な断絶はないが、この問題に関してコミュニティーは今後も警戒を怠ってはならないという。

 「Javaの互換性を損ないたいという人はいないと思うが、独自のバージョンを配布するだけの市場支配力を持った大手ライセンシーであれば、意図するにせよしないにせよ、理屈の上ではそれができる」――サンフランシスコで開催された年次「JavaOne」カンファレンスにおいて、Sun Microsystemsのオープンソース責任者、サイモン・フィプス氏はeWEEKの取材でこのように語った。

 このため、(SunやIBM、Nokiaなど)どんな企業であれ、無意識であるにせよ意図的であるにせよ、そのような変化を引き起こすことがないようにするためには、互換性コントロールを維持することが非常に重要だという。互換性が損なわれても、それが必ずしも明白でないこともある、と同氏は指摘する。

 新しい機能が導入され、その機能の基盤となる技術が100% Pure Javaではないために、互換性が損なわれる可能性もあるという。

 「技術の純粋性よりもサプライヤーの市場支配力のために、その技術が市場に受け入れられるケースもある。われわれがJavaコミュニティーとして警戒を続けなければならないのも、そのためだ。あからさまな攻撃を仕掛けてくるような間抜けな企業はないと思う」とフィプス氏は話す。

 同氏によると、Javaの互換性を最も心配している人々がJCP(Java Community Process)のメンバーだ。JCPは最近、複数のエンドユーザー組織の参加を得て大きく拡大した。JCPでは、さらに多くの個人開発者の参加を募る計画だという。

 「Javaを完全にオープンソース化し、それをオープンソースライセンスの下で提供することによって、どんなメリットがもたらされるのか」との質問に対し、フィプス氏は、「そうすることによって、Javaプラットフォームは万人が利用できる無償の技術であると見なされるようになるだろう」と答えた。

 同氏によると、人々は分岐と非互換性を混同しているが、分岐しても互換性が維持される場合もあるという。

 「Javaをオープンソース化することと、Javaの互換性を維持することの間には本来的な断絶があるとは思わない。互換性を維持するというのは、だれかが市場を不当に利用するのを防ぐことによって、ユーザーが最大の価値を得られるようにすることだと理解すべきである」とフィプス氏は話す。

 同氏はOpenOfficeを例に挙げ、OpenOffice.orgのMacintosh用のバージョン「NeoOffice」が開発されたことを指摘した。これはOpenOffice.orgの分岐であるが、OpenOfficeフォーマットおよびMicrosoft Officeの完全なサポートが維持されているという。

 「従来バージョンとの互換性という点では全く違いがなく、NeoOfficeとOpenOffice.orgの間で自由に文書を交換することができる。この分岐は、新たな市場のニーズに対応しながらも互換性を維持している」(同氏)

 「Javaをオープンソース化するには、どのくらい時間がかかると思うか」という質問に対しては、「Solarisのオープンソース化よりもはるかに簡単で、素早く実現できるだろう」とフィプス氏は答えている。しかし、Javaコードのすべてをオープンソースにできるわけではなく、しかるべき配慮と設計変更作業が必要になるとしている。

 「しかしJavaのオープンソース化は、Solarisのオープンソース化よりもずっと簡単だ(願わくば素早く実現できる)と確信している。われわれはこれを迅速に実施する計画だ」(同氏)

 先ごろSunのCEOに就任したジョナサン・シュワルツ氏がeWEEKの取材で、「もうすぐUbuntu Linuxが、SunのNiagaraプロセッサ上で動作するようになる」とコメントしたことについてフィプス氏は、「これは魅力的なアイデアだ。そのコードは確かに存在するが、それよりもOS市場の形態が徐々に変化しているとわたしは考えている」と話している。

 フィプス氏によると、市場は特定のカーネルではなく、GNUのユーザーランドを選択しているという。今後、各種のカーネルおよびチップアーキテクチャ上に置かれるこの種のユーザーランドが、市場での差別化の手法になると同氏は予想している。

 「本格業務用のUbuntuがSPARC上で動作するのは歓迎だ。市場もその方向に向かっていると思う。カーネルとチップセットの多様化は、各社のビジネスチャンスを拡大する強みであり豊かさであると認識されるまでに市場が成熟した」(同氏)

 Sunは先週、OSにほとんど制約されないJDK(Java Development Kit)を配布することで、UbuntuおよびDebian LinuxのチームならびにOpenSolarisをベースとする3つのプロジェクトと合意したと発表した

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