LinuxWorldで語られるDellの仮想化戦略LinuxWorld Report

LinuxWorld Expo/Tokyo 2006でDellのケビン・ノリーン氏は、将来的にはXenも有力としながらも、VMwareとMicrosoft Virtual Serverが現状では選択肢になりうる仮想化技術であると話す。

» 2006年06月02日 08時00分 公開
[聞き手:西尾泰三,ITmedia]

 5月31日から6月2日まで開催される「LinuxWorld Expo/Tokyo 2006」。2日目の基調講演にはDellのLinux・HPCC・Virtualizationグローバル・アライアンスのシニアマネージャ、ケビン・ノリーン氏が登壇した。

 同氏は、HPCC(High Performance Computing Clusters)分野において、サンディエゴ・スーパーコンピュータセンターで開発されたオープンソースのクラスタ管理ツールキット「Rocks」に代表される標準化のツールなどを用いたDellの取り組みを紹介したほか、単にコンピューターを提供するのではなく、空調や電源設備のような一からデータセンターを作るノウハウを凝縮した完全なソリューションの提供こそがDellの強みなのだと話す。

 「Dellは考えを持ったリーダーである」とノリーン氏。そんな同氏にインタビューを行い、Dellが考える仮想化技術の話を中心に聞いた。

ノリーン氏 「XenはRed HatとNovellが正式にサポートしたら有力な選択肢になるだろう」とノリーン氏

ITmedia 大手ベンダーは軒並み仮想化技術に対するコミットを打ち出しています。例えば日本IBMは先日、「IAサーバ・ソリューション・セミナー」を開催しましたが、そこでのテーマの1つもやはり仮想化であり、特にVMwareとのパートナーシップを強くアピールしていました。また、HPにしても、Microsoftとの関係やXenへのコミットはDell以上ではないかと思うのですが、そうした競合他社と比べ、仮想化の領域でリーダーであるとする根拠はどこにあるのでしょう。

ノリーン われわれは例えばUNIXなどの独自技術を持っているわけではなく、スタンダードを確立していくことに集中しています。競合他社について言えば、独自技術を使ったソリューションも提供しているわけですから、そちらへ顧客を誘導する場合もあるかもしれませんが、わたしたちは、独自の技術で囲い込んでいくのではなく、あくまで標準化されたものを提供することこそが強みとなります。さらには、Red Hat、Novell、VMware、Xensoruceといったパートナーと強力な協力関係を、またMicrosoftの仮想化技術にも常に気を配るなど、パートナーシップモデルの色がかなり濃いものとなっているのも、すべては顧客が求めるものを提供する、顧客に幅広い選択肢を提供するためなのです。

 この結果、DellはWindows、Red Hat、Novell SUSE、そしてVMwareもここに加えてよいでしょう、この4つのOSを持つに至りました。Xenについて言えば、今後重要な役割を果たすことは間違いないでしょうが、stability(安定性)の面でまだ時期尚早かと思います。Novellは「SUSE LINUX Enterprise Server 10」(SLES 10)で、Red Hatは「Red Hat Enterprise Linux 5」(RHEL 5)でXenを正式にサポートする予定であり、現状では、まだ十分に展開されている段階ではありません。

 このため、今すぐに仮想化技術を導入したいと願うなら、2つの選択肢から選ぶことになるでしょう。1つはVMware、もう1つはMicrosoftの「Microsoft Virtual Server」です。

ITmedia Xenのハイパーバイザーに独自の仮想化スタックと管理機能を付加させた製品を持つVirtual Iron Softwareについてはどう見ていますか?

ノリーン 標準技術の採用を念頭に置くわたしたちとしてはサポートしづらい製品と言えるかもしれません。

ITmedia 米国での仮想化技術を導入した事例にはどのようなものが?

ノリーン ジュースで有名なウェルチ(Welch's)の事例などが最近では大きな事例と言えますが、もう間もなく新たな事例をお届けすることになります。日本では、レンタル収納スペース事業の「キュラーズ」をはじめ、パーキング事業やレコード・マネジメント事業など不動産関連の新事業を展開しているピードモントなどが仮想化技術を導入してビジネス上の課題を解決していますね。

仮想化でサーバベンダーは損をする?

ITmedia 素朴な疑問なのですが、サーバリソースを最大限活用する仮想化技術が普及すると、必要なサーバの物理的な台数が減り、Dellにとってはうれしくないシナリオになるのではないのでしょうか?

ノリーン 当初はそう考えましたが、実際には、むしろハードウェアの出荷は伸びています。ただし、そこで選ばれるサーバは、コンフィグレーションの高いもの、例えば、メモリやディスク容量の大きいものに人気が集まっています。

ITmedia 今後仮想化技術が進むと、最も効率のよいシステムとしては、ブレードサーバとSANの組み合わせになると思うのですが、どのように見ていますか。

ノリーン その通りだと思います。実際そのような構成が増えている傾向も見られます。スケールアウトの考え方であるブレードサーバとリソースを最大限に活用しようとする仮想化技術は相性がよく、今後、仮想化されたリソースを有効に活用できるような方法をブレードサーバの利用によって提供していけると考えています。仮想化技術の導入を検討する際には、キャパシティプランニングとPoC(Proof of Concept)がより重要になってくるでしょうね。

ITmedia 日本国内ではItaniumの普及率が目を見張るものがあります。当然HPCCの領域でもItanium 2が普及していると見てよいと思うのですが、この部分は、Intel Xeonまたは年度内に投入が予定されているAMD Opteronを搭載したサーバでカバーしていくのでしょうか。

ノリーン Dellとしては、Itaniumの需要が十分になかったと見ています。費用対効果やポーティングの手間などを考えると、XeonとItaniumでそれほど差がないと判断したわけです。かっちりと仕様を決めてItaniumを導入するのではなく、小さくスタートして成長とともにサーバを増やしていく手法、いわゆる「スモールスタート、ペイパーグロウ」においては必ずしもItaniumでなくてもよいのではないでしょうか。

ITmedia あなたのボスは、元HPにおられたLinuxグローバル・アライアンスディレクターのジュディ・シャービスさんですよね。彼女はどのようなミッションを最優先で取り組んでいるのでしょう。。

ノリーン 彼女のミッションであり、かつ、わたしたちの明確なゴールでもあるのですが、Linuxを動作させるサーバであればDellがベストであるという揺るぎない事実をコミュニケーションを通して業界全体に認知していただくことです。



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