このようなことから、ガートナーでは、2005年に「新基幹系システム」の考え方を発表した。新基幹系システムは、メインフレームの良さ、すなわち、安心・安全・信頼性と、オープンの良さ、すなわち、選択の自由、先端技術、コスト・パフォーマンス、柔軟性などを兼ね備えたものである。
こうした新基幹系システムの考え方は、決して単なるビジョンではなく、リアリティを持つものである。既に、各ベンダーは、このような考え方のもと、製品開発を進めつつある。こうしたベンダーに共通な考えとは、既に、メインフレームでもこれまでのオープンの考え方でも、これからの時代要請へは対応できない、というものである。よって、IBMは、メインフレーム上で安定と革新の両立を図るべく、メインフレームを進化させ続けている。国産ベンダーは、メインフレームを代替し、さらに新たな時代要請に応えるものとしてItaniumプロセッサベースの基幹系サーバシステムの開発を加速しつつある。同様に、HPは、これまでのPA-RISC/HP-UXサーバをItanium/マルチOSベースへと移行しつつある。HPが言うように、ガートナーも既に、HPのハイエンドサーバでは、PA-RISCベースのサーバの出荷をItaniumサーバが上回ったと見ている。今後、この状況はさらに顕著なものとなるであろう。これから数年のうちに、ItaniumとHP-UXはさらに進化するであろう。この時、HPのサーバも単なるサーバではなく、これからの基幹系システムを支える1つの重要な選択肢へと進化していくであろう。
このように、日本では、着実にItaniumサーバが新たな基幹系システムの選択肢になりつつある。これは、世界のItanium市場を牽引しているHPに加え、国産ベンダーがメインフレームに替わる受け皿としてItaniumサーバに積極的になっているためである。このような日本のベンダーの積極的取り組みの結果、2005年には、日本がItaniumサーバでは世界でナンバーワンの国となった。
これは、世界の基幹系の1つの潮流を日本がリードする時代に入ったことを意味する出来事である。日本では、ITの利活用で世界の諸外国に遅れを取っているとする論調が各所で見受けられるが、こうした基幹系システムや、さらにユビキタスといった分野では、既に他国をリードしているところもある。こうした動きは結果として、将来の日本のITを世界に冠たるものにする動きへとつながるであろう。企業は、こうした動きを、追い風として、自社の情報システムを見直すチャンスとしてとらえるべきであろう。
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