ポスト・オープン時代に求められる新基幹系サーバシステムを考える特別寄稿(1/3 ページ)

ITの柔軟性が問われる現在、ガートナーが2003年の後半から提唱を始めた「ポスト・オープン」が現実のものとなりつつある。ここでは、ポスト・オープン時代の情報システム基盤の中核技術となるItaniumと併せてポスト・オープン時代に求められる基幹系サーバシステムのありかたを論じる。

» 2006年06月07日 16時10分 公開
[亦賀忠明,ガートナー]

 さまざまな観点において、時代は、大きく変わりつつある。このことを技術の導入の視点で言えば、単純にオープン技術を導入すればよいという時代から、垂直統合された完成度が高く、かつ、柔軟性のあるテクノロジーを導入すべきポスト・オープンの時代に移行しつつある。

 本稿では、ポスト・オープン時代に求められる基幹系サーバシステムのありかたを論じる。

時代変化を読み解く

 まず、重要な事柄は、時代がこれまでとは変わってきているという認識を持つことである。多くのユーザーは、日々の業務を抱えており、なかなかこうした認識を持つことは難しい。しかしながら、時に時代というものは、急速に新たな方向へと転換するものである。実際、基幹系システムを取り巻く環境は、大きく変化してきている。

 例えば、数年前、レガシーマイグレーションという言葉が関心を集めた。今、こうした話はあまり目にしないが、実際のところ、この話は生きている。端的に言えば、これまでのような手法を中心とするレガシーマイグレーションについての議論は終焉した。現在求められている議論は、その受け皿と移行シナリオである。

新たな時代:ポスト・オープン

 ポスト・オープンは、ガートナーが2003年の後半から提唱を始めた予言的キーワードである。

 これは、特に市場の変化がベンダー戦略に与える影響を認識すべきという観点から提唱を始めたものである。それから2年半が経過した今、そこで提唱したことが現実のものとなりつつある。本稿ではすべてを語ることはできないが、図1にその概要を整理する。

図1

 今後の基幹系システムのありかたを考える場合、こうした時代変化を的確にとらえ検討することは、非常に重要である。例えば、オープンの複雑性が問題視される中、単に、オープン技術を力ずくで組み合わせ基幹系システムを構築するといったことは、もはや、根本から改めなければならない。また、これからは分散の時代と考え、単に集中=悪、分散=善とするようなステレオタイプ的発想も誤ったものである。これからは、分散であっても統合されていなければならない。さらに、これまでは、どのようなアプリケーションを導入すればよいかということが情報システムにおける議論の中心であったが、これからは、ユーザーに対して、どのようなサービスを提供するか、がより重要なテーマとなる。

 企業は、こうした時代要件を、あらかじめ総合し、次の10年の要件に耐えられる基幹系システムを企画し設計しなければならない時代に入ったのである。

メインフレーム市場はどういう状況か

 時代が、1980年代のメインフレーム時代、1990年代のオープン時代から、2000年代のポスト・オープン時代に入ったとは言え、メインフレームは、これまで、また今でも日本の多くの基幹系と言われているシステムを支えている。ではこの市場はどういう状況か。これは、実際、減少傾向にある。(図2)

図2

 このことは、時代が既に従来のメインフレームの時代から次の時代へと移行しつつあることの表れである。このように、企業は、メインフレームの受け皿を真剣に考えなければならない時代に入っている。

 さらに、ポスト・オープンの時代に入り、ITにはさらなる柔軟性が問われている。変化への対応が重要なキーワードとなっている昨今、変化へ対応できないシステムは、見直すべき、とする考えが主流となってきている。このようなことから、現在、メインフレームの硬直性が改めて課題としてクローズアップされている。

 当然、これはすべてを変えるべき、ということではない。しかしながら、その存在自身が、「変化を妨げるもの」であるとしたなら、それはやはり見直しの対象となってしかるべきものとなるというのは、一般的に考えてもそのとおりである。一方、それでは、何でも変化すればいいかと言えば、これも、否である。守るべきものは当然ある。特に、日本において、守るべきものとは、安心・安全・信頼性、である。これなくして、日本の基盤を支える基幹系システムを語ることはできない。

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