「最高の空間にしよう」アンワイヤードインターネットで技術者を鼓舞する村井教授Interop Tokyo 2006

「Interop Tokyo 2006」の基調講演で、村井純教授は電波によるデジタルコミュニケーションと有線ネットワークのコンバージェンスの時代が訪れていると語り、「最高の空間にしよう」と技術者を鼓舞した。

» 2006年06月07日 17時37分 公開
[堀哲也,ITmedia]

 6月7日、幕張メッセで「Interop Tokyo 2006」の展示会が始まった。オープニングの基調講演には、「日本のインターネットの父」として知られる慶応大学環境情報学部の村井純教授が登場。電波によるデジタルコミュニケーションと有線ネットワークのコンバージェンスの時代が訪れていると語り、「どういう空間として利用できるのか考えてほしい。最高の空間にしよう」と技術者に呼び掛けた。

 村井氏は冒頭、社会インフラとなったインターネット技術の現状を語り、政策やビジネスが既にIPを前提に議論されるようになったと胸を張る。「とうとうこの時がきた。これはすごいことだ」

村井純氏 慶応大学環境情報学部の村井純教授

 現在では、通信と放送の融合が叫ばれ、有線のインターネット環境に無線LAN、携帯電話、放送と電波を活用したアンワイヤードのデジタルネットワークの融合が始まりだした。村井氏は、アナログテレビ放送が終了する2011年の「完全デジタル元年」に向けて、これから5年間でアンワイヤードの基盤を上手に活用し、どう花開かせるかが問われると話した。

 「これによって生まれる新たな空間を上手に利用することが、わたしたちに完全な自由と創造性を与えるものになる」(村井氏)。

 ネットワークを介したデジタルコミュニケーションは、これまでも大きく社会を変えてきた。「人間は簡単に新しい知にアクセスできるようになった」だけでなく、人間同士のコミュニケーションの在り方自体を変化させている。村井氏は、新しい知へのアクセスがさらにまったく新しい知を生み出し、それによって新たな社会が可能になるという。

 同氏は、無線によるアドホックネットワークを例として挙げ、自律的につながることがさまざまな社会を可能にすると話した。例えば、ある自動車の車輪を制御するコンピュータの情報が、後続の自動車とアドホックにつながれば、スリップしそうな状況を後続車に伝え、事故を防止することができる。人間同士のコミュニケーションという点では、これまでのネットワークコミュニケーションのバリエーションを増やすことになるという。同氏はこれを「犬の遠ぼえ的コミュニケーション」と表現し、デスティネーションアドレスがなく、聞いた人が反応するという自然なコミュニケーションモデルが可能になるという。

 「そのためには洗煉された無線ネットワークが必要になる。無線LANは使いにくいと思っているかもしれないが、Felicaなどさまざまなところで無線が使われている。こういったことに関心を持って、上手に使える環境を作ってほしい」

 同氏は講演の中で、インフラとして大切になるのは人間が自由に創造性を発揮できる基盤を作ることだと繰り返した。「そういった基盤を作っているという意識を持つ必要がある」。アンワイヤードインターネットの時代に向けて技術者を鼓舞した。

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