Interopの象徴、ShowNetで具現化した「Net 2.0」のテクノロジーInterop Tokyo 2006(1/2 ページ)

Interopの象徴ともいうべき巨大展示会ネットワーク「ShowNet」。それ自体が最新ネットワーク技術のショーケースでもある。Net 2.0という新コンセプトを旗印に具現化されたShowNetの実像についてレポートする。

» 2006年06月09日 18時05分 公開
[ITmedia]

 「ShowNet」は、Interop Tokyoの会場やカンファレンス会場を結び、インターネットへの接続環境を提供する巨大なネットワークである。Interopの出展者に対し、ネットワークを提供することが1番の目的だが、同時に、近未来に現れるであろうサービスや技術を織り交ぜた形で、進化するテクノロジーを積極的に取り入れたデモンストレーションとしての側面も持っている。また、国内外のネットワーク技術者や団体が枠を超えて集まり、様々な最新機器のInterOperability(相互接続性)を検証する場としても、大きな役割を果たしている。世界で初めて投入される機器もあり、機材の合計は総額で何と40億円を超えるものになるという。

Net 2.0という新コンセプト

 ShowNetが提唱する今年のテーマは「Net 2.0」。ここ数年の間に、IP、光、セキュリティ、メディアといった技術は急激な進化を遂げた。しかし、これらの技術は個別に展開されており、完全な融合には至っていない。Net 2.0というキーワードは、すべてのネットワーク技術の原点に立ち返り、これらを新しく組み直そうというコンセプトの下に創られた言葉だ。

昨年は10Gbps×4のマルチトランクで40Gbpsを実現していたが、今年は大容量回線として「OC768」が利用され、40Gbps×1で結ばれている。世界初となるシスコとジュニパーのマルチベンダーによる相互接続も目玉だ

 Net 2.0の最終形はまだ見えない部分もあるが、現時点での答えは「40Gbpsを超えるブロードバンド化へのあくなき挑戦、単一基盤でIP機能を最大限に生かしながら複数のサービスを統合すること、セキュリティを分離しない完全一体化したネットワークの構築、インターネット技術がもたらす放送の未来像の提示、さらにユビキタス環境の具現化である」と、ShowNetのツアーナビゲーターを務めた山口英氏(奈良先端科学技術大学院大学 教授)は語る。

40Gbpsの大容量回線で結ぶ

 今回のShowNetで注目すべき点を見てみよう。ネットワーク面では、まずブロードバンド。幕張会場とNTT大手町データセンターを結ぶ「ShowNet External」と呼ばれる接続部分には、大容量回線として「OC768」が利用され、40Gbpsで結ばれている(このほか10Gbps×4もあり合計で80Gbpsまでの帯域を確保)。さらに、ここではGMPLS(Generalized Multi-Protocol Label Switching)を活用し、世界で初めてシスコシステムズとジュニパーネットワークスのマルチベンダーによる相互接続を実現した。大手町のデータセンター側は、国内ISPの相互接続ポイントであるIXポイントに接続され、いくつかのポイントではIPv6とIPv4のデュアルスタック接続にも対応している。また、ShowNet側からISPの外側にいるユーザーに対し、10Gbpsを超えるストリーミング(HDTV over IP)の提供も可能にした。

 一方、ShowNetで重要となるテクノロジーの1つに、セキュリティが挙げられる。外部からのさまざまな攻撃から守り、内部から起こる可能性がある脅威を未然に防ぐために、ネットワーク設計段階からセキュリティをインテグレートしている。今回のShowNetでは、各ホール側で管理されているセキュリティデバイスは最小限になっている。その代わり、それ以外の必要なセキュリティデバイスをNOC(Network Operation Center)側に置いて運用管理する仕組みだ。

 Interopの中央管理室であるNOCルームでは、十数名のスタッフがネットワークの状態を常に監視し、セキュリティの脅威に対処している。また、トラフィックやアタックをビジュアル化する巨大モニターがあり、その様子を来場者が自由に閲覧できるようになっている。

ShowNetに対して行われた攻撃がビジュアル表示されている(Interop Tokyo 2006運営事務局提供)。上の画面はポートスキャンが広がる様子。NOCルームの中にこれらを表示するスクリーンが設置されている

 ShowNetに接続する出展ブースへの攻撃監視・防御、ウイルス対策、フィルタリング、脆弱性検査といったセキュリティ対策も、NOCによって集中的に施される。従来ばらばらに管理されていたものが集約されることで管理も楽になり、運用コストも軽減できるメリットがあるという。

 一方、インターネットと放送の融合という観点からは「ShowTV」というスタジオを構築している。ここでインターネットを意識した最先端の制作ワークフローを目の当たりすることができる。専用スタジオでHDTVの素材が撮られ、それをノンリニアで編集したあと、映像データをインターネット上に送信し、同時にスイッチングなどの操作も行える。1つの映像ソースは、HD/HDV/H.264/WMVなどの形態にエンコードされ、マルチユースの素材として利用される。

ShowNet TVでの提案は、ワンソース、マルチユース。1つの映像ソースを、HD/HDV/H.264/WMVなどさまざまな形態にエンコードし、最終出力して放送する。将来的は地上波デジタルやワンセグへの対応も行われるだろう

 各会場への映像については、IPv6/v4のマルチキャストで流す仕組みだ。また、NTTの「i-Vistoシステム」によって、非圧縮HDTV over IPの多重伝送も行われている。「IMC」は放送技術と情報通信技術のコンバージェンスについて具現化している。

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