トレンドに傾注するMSのハードウェアはモックからリアルへ(2/2 ページ)

» 2006年06月12日 07時00分 公開
[Paul DeGroot,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版
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 そのほかに動向が注目されるのは、Microsoftの新しいWebベースサービスブランド“Live”の携帯電話など無線システムへの拡張だろう。Gates氏によると、Microsoftはパートナーと協力して、携帯電話キャリアを通じてWindows Liveサービスに接続できる携帯電話やWebカメラなどのデバイスの提供を計画している(携帯電話については既にリリースされているものもある)。壇上のデモでは、PhilipsとMotorolaの携帯電話を使用して、VoIP通話を行っている。どちらの携帯電話にも、Windows Live Messengerクライアントのモバイル版が搭載されており、PCを介してインターネットに接続し、一般の電話回線ではなくWebベースのメッセンジャーサービスを介して通話を実現している。Verizonの新しいサービスVerizon Web Callingでは、このような通話サービスを1分あたりの通話料0.019ドルから30カ国で提供する(Verizon Web Callingは、2005年末に発表されたMCIサービスの後継である。VerizonはMCIを買収している)。

 2006年夏には、Messenger、Windows Live Mail(Hotmailの後継サービス)、Windows Live Spaces(Microsoftの次期ブログサービス)を中心としたWindows Liveサービスの組み込みを希望するデバイスメーカー向けにSDKのβ版がリリースされる予定である。

今後のサーバ製品はすべてx64ベースに

 特にサーバ市場でのx64 CPUの普及を踏まえ、Microsoftは今後数年のうちに同社のサーバソフトウェアをすべて64ビット版のみの提供に切り替える予定である。この切り替えの対象となる最初の製品は、Exchange 2007とWindows Server 2003 Computer Cluster Editionだ。Windows Small Business Server(SBS)の後継製品“Centro”(SBSの拡張版と言える中規模企業市場を狙ったバンドル製品)、Longhorn Server R2(2009年ごろリリース予定)は、当初から64ビット版のみの提供になる見込みだ。

 また同社は、マルチコアプロセッサを活用するためのソフトウェアの強化にも力を入れている。現在のOSやアプリケーションは、マルチコアCPUの使用により実現可能な並列処理のメリットを引き出すように最適化されていないため、シングルコアから4〜8コアに移行したとしても、2、3倍のパフォーマンスの向上しか見られないとGates氏は指摘する。Microsoftは、マルチコアハードウェアの真価を引き出せるよう、開発ツール、OS、アプリケーションに変更を施す計画を立てている。

新興市場でのPC利用を促すFlexGo

 世界の新興経済は、Microsoftにとって大きなマーケットになる可能性を秘めている。しかし、このような地域の住民の多くは、資金的にPCやインターネットに手が出せずにいる。Microsoftは今回のWinHECでFlexGoというプログラムを発表した。これは、一部地域において、少ない費用でもコンピュータを利用できるようにするためのプログラムだ。

 同プログラムでは、特殊なOS機能と、OEMが提供する安価なコンピュータ、現地の電気通信企業が提供するネットワークアクセス(おそらくこれらの企業がコンピュータの販売も手がける)、現地の融資会社からの資金提供により、従量制(利用時払い)方式でコンピュータを利用できるようにする。携帯電話では新興市場におけるこの方式の有効性は証明されており、新興市場でのPCの普及率は6%であるのに対し、携帯電話の普及率は27%である。

 提供されるコンピュータ本体の価格はおよそ600ドルになる見込みだが、Microsoftは補助金を出して初期費用が約250ドルで済むようにする。そして、この補助分は時間単位のプリペイドカードを販売することで回収される。数百時間コンピュータを使用すると(その分の料金の支払いを済ませている場合)、自動的そのコンピュータはユーザーのものとなり、追加の料金は発生しない。FlexGoのもう1つのバージョンでは、ISPや電話会社がサブスクリプションベースでコンピュータの使用権を再販する。この場合の利用料は、プリペイド式のテレフォンカードを使用するのではなく、電話またはインターネットの毎月の利用料と合わせて請求される。

 ブラジルで実施された同システムの試験運用は成功を収めている。また、Lenovoはインドと中国でFlexGoの提供を開始する予定だ。

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