経営戦略なきところにIT戦略なし1あなたの会社は大丈夫か?企業にはびこる「間違いだらけのIT経営」:第4回(1/2 ページ)

「ITは道具に過ぎない」。よく言われる言葉である。ITを導入すれば何でもできるという誤解を解くためならば、このセリフも意味があるが、ITを単なるデータ処理の道具としてしか見ていない企業がこれを発するのは危険である。今回は戦略性を備えたIT導入について考える。

» 2006年06月27日 07時00分 公開
[増岡直二郎,アイティセレクト]

 IT導入には戦略的に取り組まなければならないと、よく言われる。

 その理由を改めて考えてみると、まずIT投資は企業経営に大きく影響するほど巨額だから確実に効果を出すことが求められ、戦略的に取り組めということになる。事実、一企業あたり情報化費用が年間事業収入に占める割合を見ると、平均で1・33%(8億円超)にもなる。年間事業収入が1億円以下の企業では42・44%(約2300万円)、ちなみに100億円から1000億円企業で2・55%(約8億3000万円)と、小企業になるほど割合が大きい(「情報サービス産業白書2004」JISA)。これほど莫大な投資に、漫然と取り組むわけにはいかない。

 さらにITは企業経営改革の手段として位置づけられており、ビジネスモデルやプロセスに大きな影響を与えるので、経営戦略との充分な関連付けで取り組むことが求められる。そしてインターネットが普及し、ITが自社の中で完結せず、関連会社・取引先・顧客などとの関係を考慮に入れて広範囲に対応しなければならないことで、戦略性が求められる。

取り繕うだけの策には「戦略性」は生まれない

 しかし実態面や統計上から見ても、IT戦略が忘れ去られているケースが少なくない。

 ある大企業の工場は年商約1000億円、そのうちの約70%の量産品の生産に関してクライアントサーバーシステムを導入、残りの多種少量品ではレガシーシステムを運用していた。あるとき量産品システムのサーバーと端末の増設が必要になったが、量産品では投資効果がもう出ないので、本社に非量産品に新システムを導入するという偽りの投資申請をして認可を得た。

 またある中堅企業では、営業システム構築のためにプロジェクトチームが問題点分析や営業要望収集などをしていたが、そんな悠長なことでは時間がかかると言うトップのハッパによって、分析を放り出して帳票や営業経営指標の出力という目前のテーマをバタバタと決めてしまった。

 これらは決して特殊なケースではなく、目標達成のために表面を取り繕う、あるいは拙速という意味で一般化され、現場の実態を表している。そこに戦略を見ることはできない。

 統計上からも裏づけられる。中堅・中小企業の経営者陣を対象にした調査で、「IT投資が経営戦略の一環として位置づけられていない」という回答が約30%も占める(「日経アドバンテージ」04年4月)。その他の調査でもITが戦略性に欠ける実態はいくらでも見ることができる。

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