「EIP市場は伸びない」、IBMが業務連携志向のポータルソフトを発表

日本IBMは7月12日、企業向けポータルサーバの新版「WebSphere Portal V6.0」を発表した。新バージョンでは、SAPアプリケーションやRDBとの連動が容易になっている。

» 2006年07月12日 16時38分 公開
[堀見誠司,ITmedia]

 日本アイ・ビー・エムは7月12日、企業向けポータルサーバの新版「WebSphere Portal V6.0」(WP 6)を発表した。製品は、全社規模で導入する「WebSphere Portal Extend」、事業部単位で導入する「WebSphere Portal Enable」、新規導入向けの「WebSphere Portal Server」と、利用規模に応じて3つの形態で提供される。

WebSphere Portalの機能を説明する澤田千尋Lotus事業部長

 WP 6の従来のバージョンに対する大きな変更点は、(1)アプリケーション開発環境の整備、(2)操作性の改善、(3)スケーラビリティの向上の3つ。

 (1)については、同社が推進するSOA(サービス指向アーキテクチャー)対応強化の一環として、SOAPでのバックエンド連携に対応、また、ポートレット開発ツール「IBM WebSphere Portlet Factory」が標準で提供される。Portlet Factoryは、特別に環境を用意せずにSAPなどの業務アプリケーションやリレーショナルデータベース(RDB)と連携するポートレットを開発できることが特徴で、「生産性は12倍向上する」(IBM)という。

 さらに、複数のポートレットが連携するコンポジットアプリケーションをテンプレートとして保存し、再利用できるようにした。加えて、ポータル間の業務プロセスの連動を容易にするため、プロセス管理に「WebSphere Process Server」、ワークフロー開発に「Workflow Builder」といったツールを搭載する。

 (2)については、ポートレットの追加や移動を直感的に行えるようインタフェースを改良。ポータルアプリの管理、文書管理、メール/カレンダー表示、サイトの位置を追跡する「パンくずリスト」など、Webブラウザ上で一連のメニューを実行することで、ユーザーの生産性を上げる工夫を施している。

リストからポートレットをドラッグ&ドロップで任意に配置できる。文書管理機能として、Office文書をドラフトとしてポータル上に公開したり、ローカルでの編集内容をポータル上の文書に反映させたりできる

 さらに(3)の拡張性について、のキャッシュやデータベースアクセスをチューニングすることにより、利用可能なページ数を従来の約4倍にあたる4万ページ以上に引き上げた。仮想ポータル機能を利用して、例えば顧客向け、取引先といったように用途別に複数のポータルを1つのプラットフォームで稼働させることもできる。

 記者発表会で製品のプレゼンテーションを行ったLotus事業部の澤田千尋事業部長は、WPなどが属するEIP(Enterprise Information Portal)分野の伸び悩みについて懸念を示す。

 「われわれはポータルミドルウェア市場においてトップシェアだが、国内のEIP市場全体の伸びは思ったほど“爆発”していない。グループウェアの延長として使われているインフォメーションポータルではなく、SAPやNotes/Domino、RDBと連携するトランザクションポータルとして、業務プロセスの中で使うことを企業に提案したい」

 そのため日本IBMは、SAPコンテンツを部品としてポータルに容易に取り込めるPortlet Factoryを武器に、短期間でNotes/Dominoアプリベースのポータルを構築するための導入支援サービスと組み合わせ、業務直結型のポータルとして売り込む販売戦略を採る。併せて、自動車販売、購買業務、保険営業、といった業種別のソリューションキットを用意し、ビジネスユーザーのポータルとしての価値を訴求していくという。

 WP 6の価格は、Extendが1859万円、Enableが1358万5000円、Portalが35万7500円(いずれも税別)。7月26日からダウンロード可能で、メディアは8月24日から出荷される。

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